【弁護士の視点】参政党・初鹿野裕樹参院議員を書類送検|SNSに「事実」を投稿 |福岡で弁護士が刑事事件(示談交渉)をスピード解決

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【弁護士の視点】参政党・初鹿野裕樹参院議員を書類送検|SNSに「事実」を投稿

はじめに

参政党の初鹿野裕樹参院議員(49)が、2026年9月10日付で、名誉毀損の疑いにより横浜地方検察庁へ書類送検されたと報じられました。

問題となったのは、2025年7月の参議院議員選挙期間中に行われたXへの投稿です。報道によると、初鹿野議員は、共産党員によって多くの仲間が殺害され、その方法も残虐だったとの趣旨の内容を投稿したとされています。

この投稿について、日本共産党側が刑事告訴し、神奈川県警が捜査を進めていました。

初鹿野議員は、2025年7月の参議院議員選挙で神奈川県選挙区から初当選した現職の参議院議員です。

もっとも、現段階は、警察が捜査した事件を検察官へ送ったという段階にすぎません。起訴・不起訴は決まっておらず、投稿内容の真偽や名誉毀損罪の成立が確定したものでもありません。

本稿では、個別事件について結論を示すのではなく、今回の報道をきっかけに、SNS上の投稿と名誉毀損罪、「本当のことなら罪にならない」という考え方の正確性、書類送検後の流れについて解説します。

SNSへの投稿で成立し得る名誉毀損罪

刑法230条1項は、公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した場合について、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金を定めています。

名誉毀損罪の成立を検討する際には、主に次の点が問題になります。

・不特定または多数の人が認識できる状態だったか
・具体的な事実を示したといえるか
・人や団体の社会的評価を低下させる内容だったか
・投稿者に事実を摘示する認識があったか

公開されたXのアカウントへの投稿は、一般に多くの人が閲覧できるため、「公然」の要件を満たしやすいと考えられます。

また、名誉毀損罪が保護する「名誉」とは、本人の感情ではなく、社会から受ける客観的な評価です。個人だけでなく、法人や一定の社会的実体を持つ団体も、社会的評価の主体となり得ます。

もっとも、団体や集団に向けられた表現については、具体的に誰またはどの団体を対象とする投稿なのか、その社会的評価を低下させる内容なのかを、投稿全体の文脈から判断する必要があります。

今回の投稿が名誉毀損罪の要件を満たすかについても、実際の投稿内容、投稿前後の文脈、対象となった主体、根拠とされた資料などを踏まえ、今後、検察官が判断することになります。

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刑法上の「事実」は「真実」という意味ではない

「事実を投稿しただけなのに、なぜ名誉毀損になるのか」と疑問に思う方もいるかもしれません。

ここでいう「事実の摘示」の「事実」は、内容が真実であるという意味ではありません。

証拠によって真偽を確認できるような、具体的な事柄を示すことを意味します。

例えば、

・特定の人物が犯罪をした
・会社が違法な取引をしている
・団体が暴力的な行為を行った

などの表現は、その内容が正しいかどうかとは別に、刑法上の「事実の摘示」に当たり得ます。

刑法230条も、摘示した事実が真実であるか否かにかかわらず、名誉毀損罪が成立し得ることを前提としています。

したがって、

「本当のことだから、SNSに何を書いても名誉毀損罪にはならない」

という理解は正確ではありません。

本当のことでも名誉毀損罪になる?

もっとも、公共的な問題についての正当な言論まで広く処罰すれば、表現の自由や報道・政治活動が過度に制約されてしまいます。

そこで刑法230条の2は、次の条件を満たす場合には処罰しないという特例を設けています。

・投稿内容が公共の利害に関する事実に関係すること
・専ら公益を図る目的で投稿されたこと
・摘示した事実が真実であると証明されたこと

例えば、社会的に重要な不正行為について、公益を目的として、十分な調査に基づき真実を公表した場合には、この特例が適用される可能性があります。

また、最終的に真実であることを証明できなかった場合でも、投稿者が確実な資料や根拠に基づいて真実だと信じ、そのように信じたことに相当な理由があれば、名誉毀損罪の故意が否定される場合があるとする最高裁判例もあります。

ただし、

・他人のSNS投稿を見た
・インターネット上に同じ情報があった
・知人からそのように聞いた
・自分では真実だと思っていた

というだけで、当然に相当な理由が認められるわけではありません。

どのような資料を確認したのか、情報源の信用性を検討したのか、反対の情報を確認したのかなどが問題になります。

政治や選挙に関する投稿なら自由にできる?

政治や選挙に関する言論は、民主主義社会において重要な意味を持ち、表現の自由による保障が特に重視される領域です。

一方で、政治的な発言であるという理由だけで、名誉毀損罪が一律に成立しなくなるわけではありません。

政治的な投稿についても、

・投稿内容が具体的な事実の摘示に当たるか
・誰の社会的評価を低下させる内容なのか
・公共の利害に関係する事実なのか
・公益を図る目的で投稿されたのか
・内容が真実であると証明できるのか
・真実だと信じたことに相当な根拠があったのか

などを個別に判断する必要があります。

今回の投稿が選挙期間中に行われたことは、公共性や公益目的を検討するうえで考慮される事情となり得ます。しかし、選挙期間中の政治的発言だから直ちに免責される、という関係にはありません。

投稿の真偽や違法性阻却の成否については、捜査記録や当事者双方の主張を確認しなければ判断できません。

「書類送検」は逮捕や有罪と何が違う?

書類送検とは、一般に、警察が捜査した事件について、被疑者の身柄を拘束せず、事件記録や証拠を検察官へ送ることをいいます。

少なくとも今回確認できた報道では、初鹿野議員が逮捕されたとはされていません。

書類送検後は、検察官が証拠や被疑者の供述などを検討し、必要に応じて追加の捜査を行ったうえで、起訴するか不起訴にするかを判断します。

したがって、

・書類送検=逮捕
・書類送検=起訴
・書類送検=有罪
・書類送検=前科

ではありません。

前科が付くのは、起訴されたうえで、正式裁判の有罪判決や略式命令による罰金刑などが確定した場合です。書類送検されたというだけで前科が付くことはありません。

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名誉毀損罪では告訴の取下げが重要になる

名誉毀損罪は「親告罪」です。被害を受けたとする側の告訴がなければ、検察官は起訴することができません。

また、告訴は起訴される前であれば取り下げることができます。示談によって告訴が有効に取り下げられた場合、名誉毀損罪で起訴することはできなくなります。

もっとも、示談が成立しただけで、自動的に告訴が取り下げられるわけではありません。示談書において告訴の取扱いを明確にし、別途、告訴取下書を提出するなどの対応が必要です。

一方、投稿内容が真実である、公共性・公益目的がある、社会的評価を低下させる表現ではないなどとして犯罪の成立を争う場合には、安易な謝罪や事実の承認が弁護方針と矛盾する可能性があります。

まず、投稿内容、投稿前後のやり取り、情報源、参照した資料などを保存し、認める点と争う点を整理することが重要です。

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まとめ

初鹿野裕樹参院議員は、選挙期間中のXへの投稿をめぐり、名誉毀損の疑いで書類送検されたと報じられています。

もっとも、書類送検は有罪の認定ではありません。今後、検察官が投稿内容、情報源、投稿の目的、公共性、公益性、真実性などを検討し、起訴・不起訴を判断することになります。

名誉毀損罪では、刑法上の「事実」と「真実」は異なる概念です。具体的な事柄を公然と示して人や団体の社会的評価を低下させた場合、内容が真実であっても、まず名誉毀損罪の構成要件に該当する可能性があります。

そのうえで、公共性、公益目的、真実性などの要件を満たすかが問題になります。

SNSで公共的・政治的な問題を扱う場合であっても、情報源を確認せず、断定的な表現で投稿することには刑事上・民事上のリスクがあります。反対に、刑事告訴された側も、投稿内容が問題視されたというだけで直ちに犯罪が成立するわけではありません。投稿の文言と文脈、資料や根拠を精査したうえで対応する必要があります。

※本記事は2026年9月12日時点で公表されている報道、法令及び判例をもとに、刑事法上の一般論を解説したものです。初鹿野裕樹参院議員について名誉毀損罪の成立や投稿内容の真偽が確定したものではなく、本記事が個別事件について法的評価を示すものでもありません。

この記事の監修者:弁護士 原 隆(福岡県弁護士会所属。登録番号52401)

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