【弁護士の視点】「聖闘士星矢」作者・車田正美さんが約46億円の横領被害を主張 |福岡で弁護士が刑事事件(示談交渉)をスピード解決

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【弁護士の視点】「聖闘士星矢」作者・車田正美さんが約46億円の横領被害を主張

はじめに

「聖闘士星矢」「リングにかけろ」などで知られる漫画家・車田正美さん(72)が代表を務める「車田プロダクション」など3社が、会社資金など計約46億8600万円を不正に流出させられたとして、2026年9月2日、元マネージャーで3社の元役員だった男性らに損害賠償を求める訴訟を東京地方裁判所へ提起しました。

訴状などに基づく報道によると、車田さん側は、元役員が3社の経理業務や外部との交渉を統括していた少なくとも2018年から2024年にかけて、会社口座から自身の支配下にある複数の会社名義の口座へ無断で送金したほか、取引先から支払われるライセンス料を別会社の口座へ振り込ませたなどと主張しています。

車田さん側は、これらによる被害額が約46億8600万円に上り、このうち約18億円については既に弁済を受けたとして、残る約28億8600万円の支払いを求めています。

もっとも、ここで注意しなければならないのは、現時点で公表・報道されているのは、会社3社が提起した民事上の損害賠償請求であるという点です。

2026年9月4日時点で確認できる公表資料及び主要報道の範囲では、元マネージャーらが業務上横領罪などで逮捕・起訴されたとの情報はなく、刑事告訴や被害届の提出、捜査の開始についても確認できません。もっとも、これらの刑事手続が行われていないとまで断定できるものではありません。

したがって、元マネージャーらが約46億円を横領したことが司法判断によって確定しているわけではありません。現段階では、車田さん側が民事訴訟において約46億8600万円の横領被害を主張し、そのうち未回収とする約28億8600万円の賠償を求めている事案として扱う必要があります。

本稿では今回の報道をきっかけに、会社のお金を無断で送金した場合に業務上横領罪が成立する条件、返金や示談が刑事手続に与える影響、民事訴訟と刑事事件の違いについて解説します。

会社のお金を無断で使うと業務上横領罪になる?

業務上横領罪は、業務上自己の占有する他人の物を横領した場合に成立する犯罪です。法定刑は10年以下の拘禁刑とされています。

例えば、会社の経理担当者や役員などが、業務として管理を任されている会社資金を自分のために使った場合には、業務上横領罪が問題になります。

成立を判断する際には、主に次の点が検討されます。

・その人物が業務として会社資金を管理していたか
・対象となる資金について、その人物に事実上または法律上の支配があったか
・送金や支出が与えられた権限の範囲内だったか
・会社のためではなく、自己または第三者のために処分したといえるか
・横領の故意や不法領得の意思が認められるか

会社口座へのアクセス権限を持つ経理担当者や役員が、会社の承認を得ずに自己の口座などへ送金した場合には、業務上横領罪が成立する可能性があります。

会社資金の着服が発覚した場合の刑事手続や弁護活動については、以下のページで詳しく説明しています。

関連記事 横領・業務上横領

無断送金がすべて「横領」になるとは限らない

会社のお金が不正に流出した事案であっても、必ず業務上横領罪になるとは限りません。

例えば、その人物が会社資金を管理・占有する立場にあったのか、取引先に虚偽の説明をして送金させたのか、会社のために行うべき事務に背いて会社へ損害を与えたのかによって、業務上横領罪、詐欺罪、背任罪など、問題となる犯罪が変わる可能性があります。

今回の報道では、会社口座からの無断送金だけでなく、取引先からのライセンス料を別会社の口座へ振り込ませたとの主張もされています。

しかし、具体的にどの犯罪が成立するかは、資金管理権限、契約関係、送金の方法、取引先に対する説明、資金の使途などを証拠に基づいて検討しなければ判断できません。

業務上横領罪と窃盗罪・背任罪との違いや、逮捕の可能性については、以下の関連記事でも解説しています。

関連記事 横領(業務上横領)は刑事事件として逮捕される可能性がある?

民事訴訟と刑事事件は別の手続

会社が流出した資金の返還や損害賠償を求める民事訴訟と、犯罪の成否や刑罰を判断する刑事手続は、目的の異なる別の手続です。

民事訴訟では、原告が主張する送金や資金流出があったのか、被告に返還義務や損害賠償義務があるのかが審理されます。

これに対し、刑事事件では、捜査機関が証拠を収集し、検察官が起訴するかどうかを判断します。起訴された場合には、刑事裁判で犯罪事実が証明されたかが審理されます。

そのため、

・民事訴訟を起こされたから逮捕される
・損害賠償責任が認められたから有罪になる
・民事訴訟で和解すれば刑事責任もなくなる

という関係にはありません。

民事訴訟と刑事手続が並行して進むこともありますし、民事訴訟だけで終わる場合もあります。

関連記事 刑事事件の流れ

会社に返金すれば刑事事件にならない?

会社のお金を使った後に全額を返したとしても、既に成立した犯罪が当然に消えるわけではありません。

業務上横領罪は、被害会社が告訴しなければ処罰できない犯罪ではありません。そのため、被害会社との間で返金や示談が成立した場合でも、法律上、捜査や起訴が不可能になるわけではありません。

一方で、被害弁償や示談は、実際の刑事処分を判断するうえで重要な事情になります。

捜査機関や裁判所は、

・被害額
・犯行の期間と回数
・計画性や隠蔽工作の有無
・被害がどこまで回復しているか
・被害会社が処罰を望んでいるか
・本人が事実を認めて反省しているか
・同様の行為を防ぐための対策が取られているか
・前科や前歴の有無

などを総合的に考慮します。

特に、会社が警察へ被害申告をする前の段階で、事実関係と被害額を整理し、現実的な弁済方法について合意できれば、刑事事件化を回避できる場合もあります。

ただし、「返金すれば告訴しない」「全額返せば刑事事件にしない」と一方的に期待することはできません。被害額が高額で、長期間にわたって反復されている事件では、一部または全部を弁償しても、刑事事件として捜査・起訴される可能性があります。

横領事件における被害弁償や示談の意味については、以下のページも参考になります。

関連記事 示談交渉してほしい

返済額や横領額に争いがある場合

横領を指摘された事件では、会社が主張する金額をそのまま認めてよいとは限りません。

多数の送金や長期間の取引が問題になっている場合には、

・業務上必要な支出が含まれていないか
・正当な権限に基づく送金が含まれていないか
・本人が関与していない取引が含まれていないか
・会社が主張する損害額の計算は正しいか
・既に返済した金額が適切に控除されているか

を一件ずつ確認する必要があります。

事実関係や金額に争いがあるのに、内容を十分に確認せず、会社から示された確認書、念書、返済合意書などへ署名すると、その後の民事訴訟や刑事手続で不利益になる可能性があります。

他方、実際に会社資金を私的に使用した事実を認める場合には、資料を処分したり、不自然な説明を重ねたりするのではなく、客観的資料を保存したうえで、被害額と弁済方法を整理する必要があります。

被害弁償・示談は早いほどよい?

被害弁償や示談は早期に検討することが重要ですが、単に急いでお金を支払えばよいというものではありません。

まず、問題となっている取引、実際の被害額、既に返済した金額、本人が認める範囲を整理しなければなりません。そのうえで、謝罪、弁済方法、今後の接触方法、刑事処分に関する被害会社の意向などについて協議します。

関連記事 【巨額の業務上横領事件】告訴前に被害者との示談により解決したケース

既に警察の捜査が始まっている場合でも、被害弁償や示談が無意味になるわけではありません。不起訴処分や前科の回避を目指す場合にも、被害回復の状況は重要な事情になります。

関連記事 不起訴にしてほしい

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まとめ

車田正美さん側は、代表を務める会社3社から約46億8600万円が流出したとして、元マネージャーらに約28億8600万円の損害賠償を求めています。

しかし、現時点で公表されているのは民事訴訟であり、元マネージャーらについて業務上横領罪が成立したことや、有罪が確定したことを意味するものではありません。

会社口座から無断で送金した事案では、資金を管理する立場や権限、送金の方法、資金の使途などによって、業務上横領罪その他の犯罪が問題となる可能性があります。

また、被害金を返済しても、既に成立した犯罪が当然になくなるわけではありません。一方で、被害弁償や示談は、刑事事件化、逮捕、起訴・不起訴、刑事裁判の量刑を判断する際に考慮され得る重要な事情です。

※本記事は2026年9月4日時点で公表されている報道及び法令をもとに、業務上横領に関する一般的な法律問題を解説したものです。車田正美さん側が提起した民事訴訟について、その主張の真偽や元マネージャーらの民事上・刑事上の責任を判断するものではありません。

この記事の監修者:弁護士 原 隆(福岡県弁護士会所属。登録番号52401)

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