【弁護士の視点】ソフトバンク・村上泰斗投手に暴行報道|被害届が出たら必ず逮捕される? |福岡で弁護士が刑事事件(示談交渉)をスピード解決

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【弁護士の視点】ソフトバンク・村上泰斗投手に暴行報道|被害届が出たら必ず逮捕される?

はじめに

福岡ソフトバンクホークスの村上泰斗投手(19)をめぐり、元交際相手の自宅で暴力を振るったなどとする報道が出ています。

2026年9月15日の週刊文春の追加報道では、その場にいた男性が、村上投手から暴行を受け、警察から傷害事件として捜査を進める旨の説明を受けたと述べています。ただし、これは男性側の説明として報じられたもので、警察による公式発表とは区別する必要があります。週刊文春・9月15日の報道

一方、球団は、当事者間で認識が異なる事項があり、村上投手が代理人弁護士を通じて対応していると説明しています。報道された行為がすべて事実と認定されたわけではなく、村上投手の刑事責任が確定したものでもありません。球団の説明を伝える日刊スポーツの報道

このような報道に接すると、「被害届が出たら逮捕されるのではないか」と疑問に思う方もいるでしょう。

本稿では、被害届と逮捕の関係を中心に、在宅捜査、住居侵入、示談、そして19歳に適用される少年法上の手続を解説します。

被害届が出ても、必ず逮捕されるわけではない

被害届は、犯罪による被害を受けたと捜査機関に届け出るものです。捜査のきっかけになりますが、提出されたことだけで、申告内容が事実と確定したり、相手方の逮捕が決まったりするわけではありません。

通常逮捕では、犯罪を犯したと疑うに足りる相当な理由に加え、身柄を拘束する必要性が問題になります。刑事訴訟規則も、年齢や境遇、犯罪の内容などに照らし、逃亡や証拠隠滅のおそれがないなど、明らかに逮捕の必要がない場合には、逮捕状の請求を却下すると定めています。刑事訴訟規則143条の3

例えば、次のような事情が検討されます。

  • 住居や生活状況が安定しており、逃亡のおそれがあるか
  • 関係者への働きかけや、証拠の廃棄・改変のおそれがあるか
  • 身柄を拘束せずに、必要な取調べや証拠収集を進められるか

「犯罪が成立するか」と「逮捕する必要があるか」は、別の判断です。

逮捕されないまま起訴される事件もあれば、逮捕された後に不起訴になる事件もあります。逮捕の有無だけで、有罪・無罪や事件の結論を判断することはできません。

本件についても、逮捕の報道が確認できないことから、捜査機関が何を認定し、どのような判断をしているのかを推測することは適切ではありません。

逮捕されずに進む「在宅捜査」とは

身柄を拘束せずに捜査を進める事件は、一般に「在宅事件」と呼ばれます。自宅から出てはいけないという意味ではなく、通常の生活を送りながら、必要に応じて事情聴取などに対応する形です。

在宅事件でも、関係者の供述、メッセージの履歴、映像、診断書などの証拠が調べられます。捜査が進んだ結果、逮捕の要件を満たすと判断されれば、後に逮捕される場合もあります。

したがって、「今は逮捕されていないから、事件は終わった」と考えることはできません。一方、被害届が提出されたというだけで、逮捕を前提に生活を考える必要もありません。

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報道された行為には、どのような犯罪が問題となるか

ここからは、報道内容の真偽とは別に、一般論として説明します。

殴る・蹴る行為と、暴行罪・傷害罪

人を殴ったり蹴ったりした場合、怪我を負わせれば傷害罪、傷害に至らなければ暴行罪が問題になります。

傷害の有無や程度、その行為との因果関係は、診断書、写真、当事者の説明などから検討されます。診断書があることだけで、誰がどのような行為によって怪我を負わせたのかまで確定するわけではありません。

暴行・傷害事件で何が争点になるのか、処分の見通しや弁護活動については、こちらの関連記事をご覧ください。 関連記事 暴行・傷害・傷害致死

包丁を示す行為や、危害を加えるという発言

相手の生命や身体に危害を加える旨を告げた場合には、脅迫罪が問題になります。

実際に使われた言葉だけでなく、凶器の有無、その場の状況、前後の言動なども含めて判断されます。報道の一部分だけから、直ちに犯罪の成立を断定することはできません。

合鍵があっても、住居侵入罪になることがある

合鍵を持っていることと、その時点で住居に入ることを認められていることは同じではありません。

例えば、交際中に合鍵を渡されていても、別れた後に立入りを拒まれていた場合などには、無断で入ることが住居侵入罪に当たる可能性があります。

反対に、合鍵を使って入ったという事実だけで、直ちに住居侵入罪になるわけでもありません。鍵を渡した経緯、立入りについての承諾の範囲、当時のやり取りなどを確認する必要があります。

住居への立入りが犯罪になる場合については、こちらの関連記事で詳しく説明しています。 関連記事 住居侵入・建造物侵入

19歳には「特定少年」として少年法が適用される

本件で見落とせないのは、村上投手が19歳であるという点です。

民法上は18歳で成年となりますが、少年法は20歳未満を対象としています。18歳・19歳は「特定少年」と位置付けられ、原則として家庭裁判所で処分が検討されます。裁判所「少年事件Q&A」

そのため、犯罪の嫌疑がある19歳の事件について、成人事件と同じように「示談が成立すれば、検察官が起訴猶予で終わらせる」と説明するのは正確ではありません。

原則として家庭裁判所への送致を経て、審判不開始、不処分、保護処分などが検討されます。事件の内容によっては、刑事処分を受けさせるために検察官へ送り返す「逆送」が行われ、その後に起訴される場合もあります。

在宅か身柄拘束中かという問題と、少年事件としてどの手続をたどるかという問題も、分けて考える必要があります。

被害届が出た後でも、示談には意味がある

被害届の提出後であっても、謝罪や被害弁償について話し合い、示談を成立させることには意味があります。

20歳以上の成人事件では、被害回復や被害者の処罰感情が、起訴・不起訴や量刑を判断する事情になることがあります。少年事件でも、被害回復、反省、再発防止への取組などは、家庭裁判所が処分を検討するうえで重要な事情となり得ます。

一方、当事者間で事実関係に争いがある場合には、どの行為を認め、どの部分を争っているのかを整理することが先決です。事実関係を争いながら民事上の解決を図る場合もありますが、合意内容が本人の説明や弁護方針と矛盾しないように検討する必要があります。

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逮捕前の段階で、弁護士ができること

逮捕される前や、在宅で捜査が進んでいる段階でも、弁護士が取り組めることはあります。

まず、出来事の経緯と関係資料を確認し、認める事実、争う事実、記憶が不明確な部分を整理します。メッセージや写真などは、都合のよい部分だけを抜き出さず、前後のやり取りも含めて保存することが重要です。

必要に応じて捜査機関と連絡を取り、本人の生活状況や証拠保全の状況などを説明し、身柄拘束の必要がないことを示す活動も行います。少年事件では、家族などの支援や、生活環境を整える取組も検討します。

示談を進める場合には、相手方の意向に配慮しながら弁護士を窓口として交渉します。直接の連絡が、口止めや圧力と受け取られないようにすることも大切です。

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被害届の提出や逮捕だけで、前科が付くわけではありません。また、少年事件の保護処分は刑罰ではなく、一般にいう前科とは区別されます。もっとも、逆送後に起訴され、有罪判決が確定すれば前科となります。

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※本記事は、2026年9月15日時点で確認できる報道等を踏まえ、法律上の一般論を解説したものです。本件には当事者間で認識が異なる事項があるとされており、村上投手による犯罪の成立を前提とするものではありません。確認した報道の範囲では、村上投手の逮捕・書類送検を示す情報は確認できていません。

 

この記事の監修者:弁護士 原 隆(福岡県弁護士会所属。登録番号52401)

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