【弁護士の視点】元広島カープ・多田大輔容疑者を詐欺容疑で逮捕
目次
はじめに
広島東洋カープに2015年から2017年まで在籍した元選手・多田大輔容疑者(30)が、他人名義のクレジットカードを使って東京都墨田区の個室ビデオ店の利用料3500円を支払ったとして、詐欺の疑いで逮捕されました。
報道によると、多田容疑者は2026年6月13日、JR錦糸町駅付近で寝ていた20代男性の財布からクレジットカードを抜き取り、そのカードを個室ビデオ店で使用した疑いが持たれています。コンビニで食料品を購入した形跡もあり、警視庁が関連を調べていると報じられています。
多田容疑者は、取調べに対して「金に困っていた」などと容疑を認めているとされています。
もっとも、現時点で逮捕された罪名として報じられているのは、個室ビデオ店でカードを使用したことに関する詐欺罪です。カードを抜き取った行為について、窃盗罪で逮捕・起訴されたことまでは確認できません。また、逮捕は有罪判決を意味するものではありません。
本稿では今回の報道をきっかけに、他人名義のクレジットカードを使うとなぜ詐欺罪になるのか、カードを盗む行為との違い、複数店舗で使用した場合の刑事責任、被害弁償や示談について解説します。
カードを盗む行為と、店舗で使う行為は別の犯罪
他人の財布からクレジットカードを抜き取った場合、まず窃盗罪が問題になります。
窃盗罪は、他人が占有する財物を、その意思に反して自分の支配下へ移す犯罪です。クレジットカードそのものの価値だけでなく、他人が管理しているカードを無断で持ち去る行為について窃盗罪が成立し得ます。
一方、そのカードを店舗へ持って行き、正当な利用権限があるかのように使用する行為は、カードを盗んだ行為とは別の行為です。
したがって、事実関係によっては、
・カードを抜き取った行為について窃盗罪
・そのカードを店舗で使った行為について詐欺罪
が、それぞれ問題になる可能性があります。
なぜ他人名義のカードを使うと詐欺罪になる?
クレジットカードは、原則として名義人本人や正当な利用権限を持つ人が使用するものです。
他人名義のカードを、自分に利用権限があるかのように提示して決済すると、店舗側は「正当なカード利用である」と誤信して、商品やサービスを提供することになります。
このように、店舗を欺いて商品や財産上の利益を得たと評価される場合には、詐欺罪が成立する可能性があります。今回報じられている事件でも、個室ビデオ店のサービスを不正に利用したことについて、詐欺容疑で逮捕されたものと考えられます。
もっとも、クレジットカードの不正利用は、利用方法によって問題となる罪名が異なる場合があります。
対面店舗で店員を欺いて利用すれば詐欺罪、インターネット上などで不正な情報を入力して決済すれば電子計算機使用詐欺罪、盗んだカードを使ってATMから現金を引き出せば窃盗罪が問題になるなど、具体的な決済方法に応じた検討が必要です。
複数の店舗で使った場合はどうなる?
報道では、コンビニで食料品を購入した形跡についても、警視庁が調べているとされています。
ただし、現時点では、このコンビニでの利用について犯罪が成立すると確認されたわけではありません。
一般論として、他人名義のカードを複数の店舗で使用した場合には、それぞれの利用行為が別の犯罪として捜査対象になる可能性があります。捜査の進展によっては、別事件として再逮捕されたり、複数の犯罪について起訴されたりすることもあります。
最終的な処分や刑の重さを判断する際には、利用金額だけでなく、
・カードを入手した経緯
・不正利用の回数や期間
・計画性の有無
・被害弁償や示談の状況
・同種前科や前歴の有無
などが考慮されます。
今回報じられている個室ビデオ店の利用料は3500円ですが、被害額が少額であることだけで、直ちに不起訴になるとは限りません。カードを取得した経緯や、ほかにも不正利用があったかを含めて判断されます。
被害弁償や示談は誰と行うのか
クレジットカードの不正利用事件では、示談や被害弁償の相手を慎重に確認する必要があります。
カードを盗まれた名義人だけでなく、不正利用された店舗、カード会社、決済を取り扱う会社など、複数の関係者が存在するためです。実際に誰が損害を負担したかは、カード会社による補償や決済処理の状況によっても異なります。
そのため、カード名義人へ利用代金を返せば、必ず事件が解決するわけではありません。どの犯罪について、誰が被害者となり、誰に対して被害弁償や示談を申し入れるべきかを整理する必要があります。
また、逮捕後に本人や家族が被害者へ直接連絡すると、口止めや証拠隠滅を疑われるおそれがあります。示談を検討する場合は、弁護士を通じて連絡するのが原則です。
逮捕後に不起訴を目指すための対応
容疑を認める事件では、事実関係を正確に確認したうえで、被害弁償や示談を早期に進めることが重要です。
ただし、報道されている内容がすべて正しいとは限りません。カードを取得した経緯、利用した店舗や回数、実際の利用金額などについて、取調べで記憶と異なる内容を安易に認めないよう注意する必要があります。
逮捕直後から弁護士が接見し、取調べへの対応を助言するとともに、被害関係を整理して示談を進めることで、身柄の早期解放や不起訴処分を求めていくことになります。
まとめ
他人のクレジットカードを持ち去り、そのカードを店舗で使用した場合には、カードを持ち去った行為について窃盗罪、店舗で使用した行為について詐欺罪が、それぞれ成立する可能性があります。
また、複数の店舗でカードを使用していれば、それぞれの利用行為が別の事件として捜査される場合があります。
クレジットカードの不正利用事件では、被害額の大小だけでなく、カードを入手した経緯、不正利用の回数、被害弁償や示談の状況などが刑事処分に影響します。示談の相手も事案によって異なるため、早期に事実関係と決済関係を整理することが重要です。
多田容疑者について、現時点で逮捕が確認されているのは、個室ビデオ店でのカード利用に関する詐欺容疑です。カードを抜き取った行為やコンビニでの利用については捜査中と報じられており、有罪判決が確定した事件ではありません。今後の捜査と処分を慎重に見守る必要があります。
※本記事は2026年9月8日時点で公表されている報道及び法令をもとに、刑事法上の一般論を解説したものです。多田大輔容疑者について有罪判決が確定したものではなく、本記事が報道されている容疑や関連行為の真偽、刑事責任を判断するものではありません。
この記事の監修者:弁護士 原 隆(福岡県弁護士会所属。登録番号52401)
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