【弁護士の視点】五輪銀メダリスト本多灯被告に拘禁刑1年求刑|危険運転致傷で執行猶予はつく? |福岡で弁護士が刑事事件(示談交渉)をスピード解決

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【弁護士の視点】五輪銀メダリスト本多灯被告に拘禁刑1年求刑|危険運転致傷で執行猶予はつく?

はじめに

東京五輪の競泳男子200メートルバタフライ銀メダリスト・本多灯被告について、危険運転致傷罪に問われた刑事裁判の初公判が2026年8月25日、東京地裁立川支部で開かれました。

報道によると、本多被告は起訴内容を認め、検察官は拘禁刑1年を求刑しました。一方、弁護側は執行猶予付き判決を求めています。判決は9月9日に言い渡される予定です。

起訴状などによると、本多被告は2025年11月21日、東京都多摩市の最高速度30km/hの道路を、時速88~108kmで走行したとされています。

その後、カーブを曲がりきれず対向車線にはみ出し、対向車と衝突。運転していた60代の男性に胸骨骨折などのけがを負わせたとして、危険運転致傷罪で起訴されました。

検察側は公判で、前を走るスポーツカーについて行こうとして速度を上げたなどと指摘しています。

本多被告自身は初公判で、起訴内容を認めています。

なお、日本水泳連盟も8月7日、本多選手が危険運転致傷罪で起訴されていたことを公式に発表し、パンパシフィック選手権及びアジア競技大会への出場を取りやめることを公表しています。

今回の裁判では、

  • 「拘禁刑1年を求刑されたら刑務所に入るのか」
  • 「危険運転致傷罪でも執行猶予になることはあるのか」
  • 「被害者への謝罪や損害賠償は、判決にどの程度影響するのか」

という、しばしば弁護士が一般の方から相談を受ける問題が表れていますので、刑事事件を扱う弁護士の視点から解説します。

速度違反だけで「危険運転致傷罪」になるわけではない

ここで注意したいのは、

大幅な速度超過をしたからといって、直ちにすべてのケースが危険運転致傷罪になるわけではない

ということです。

本件事故当時の自動車運転処罰法は、「その進行を制御することが困難な高速度」で自動車を走行させ、その結果、人を負傷させた場合を危険運転致傷罪として処罰しています。

人を負傷させた場合の法定刑は、15年以下の拘禁刑です。

したがって、単純に、

「制限速度を何km/hオーバーしたか」

だけで決まるわけではありません。

道路の形状、カーブの状況、車両の速度などから、その速度では車両を適切に制御することが困難だったといえるかが問題となります。

本件では、最高速度30km/hの道路を時速88~108kmで走行し、カーブを曲がりきれず対向車線にはみ出したとされています。

しかも、本多被告自身が公判で起訴内容を認めています。

そのため今回の裁判では、危険運転致傷罪が成立するかどうかを争うというよりも、

どの程度の刑を科すべきか

が中心的な問題になっていると考えられます。

「拘禁刑1年求刑」は「1年間刑務所に入る」という意味ではない

ニュースを見ると「拘禁刑1年求刑」という言葉が強く印象に残りますが、求刑は検察官が裁判所に求める刑であり、判決そのものではありません。

刑法上、原則として3年以下の拘禁刑などの言渡しで、前科の状況など一定の条件を満たせば、裁判所は刑の執行を猶予することができます。したがって、拘禁刑1年が求刑されたからといって、直ちに刑務所へ収容されることが決まったわけではありません。

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起訴された後でも被害回復は重要

本件で特に注目したいのが、被害者への対応です。

報道によれば、本多被告側からは適正な損害賠償が行われ、被害者からも「若いのでスポーツ選手として頑張ってほしい」「強い処罰は望んでいない」という趣旨の意向が示されたとされています。

報道だけから正式な「示談」が成立しているかまでは断定できません。しかし、刑事裁判では、被害がどこまで回復しているか、被害者がどの程度の処罰を望んでいるかは、量刑を考えるうえで重要な事情です。

「もう起訴されてしまったから示談をしても意味がない」ということではありません。起訴後であっても、被害弁償、謝罪、示談、被害者の宥恕などを裁判所に示すことによって、実刑を回避して執行猶予を目指す重要な材料になることがあります。

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執行猶予でも「前科」はつく

もう一つ注意したいのは、仮に本多被告に執行猶予が付いたとしても、無罪になるわけではないという点です。

執行猶予付き判決も有罪判決ですので、判決が確定すれば前科になります。

「刑務所に行かないこと」と「前科が付かないこと」は別問題です。前科と刑事手続の関係については、以下の関連記事をご覧ください 関連記事 前科について

まとめ

本件の判決で裁判所がどのような判断をするかは現時点では分かりません。

もっとも、刑事裁判では、犯罪そのものの悪質性だけでなく、被害回復、被害者の処罰感情、本人の反省、再犯防止策、前科の有無などを総合して、実刑にするか執行猶予を付けるかが判断されます。

9月9日の判決を注視したいところです。

※本記事は2026年8月28日時点で公表されている報道及び法令をもとに作成しています。本多灯被告については初公判で起訴内容を認めていますが、2026年8月28日時点では判決は確定していません。

 

この記事の監修者:弁護士 原 隆(福岡県弁護士会所属。登録番号52401)

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