逮捕と書類送検の違いとは?書類送検された場合の今後の流れを解説
目次
はじめに
ニュースなどで「容疑者を逮捕」「書類送検する方針」といった報道を目にすることがあります。どちらも刑事手続きに関する用語ですが、その意味や被疑者に与える影響は大きく異なります。
「書類送検されたが、逮捕されていないから大丈夫だろう」と安心してしまう方がいる一方で、「書類送検されたということは、起訴されるのではないか」と過度に不安を感じる方もいます。いずれも正確な理解に基づいているとはいえません。
本コラムでは、逮捕と書類送検の違いを明確にした上で、書類送検された場合の今後の流れ、起訴・不起訴の判断に影響する事情、そして書類送検の段階でとるべき対応について解説します。
逮捕とは
逮捕とは、捜査機関が被疑者の身体の自由を拘束する強制処分です。逮捕には、通常逮捕(裁判官が発付する逮捕状に基づくもの)、現行犯逮捕(犯行中または犯行直後の者を令状なく逮捕するもの)、緊急逮捕(一定の重大犯罪について令状なく逮捕した上で事後的に逮捕状を請求するもの)の3種類があります。
逮捕されると、警察署の留置施設に収容され、身体の自由が制限されます。逮捕後、警察は48時間以内に被疑者を検察官に送致するかどうかを判断し、送致を受けた検察官は24時間以内に勾留請求を行うか釈放するかを決定します。勾留が認められれば、原則10日間、延長を含めて最大20日間の身柄拘束が続きます。
逮捕・勾留は、被疑者の身柄を拘束するという点で極めて強力な処分であり、仕事や日常生活に重大な支障を及ぼします。
書類送検とは
書類送検の意味
書類送検とは、正式には「書類送致」と呼ばれるもので、警察が被疑者の身柄を拘束せずに、捜査書類と証拠物のみを検察官に送致する手続きです。刑事訴訟法第246条は、「司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、(中略)書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない」と定めており、書類送検はこの規定に基づいて行われます。
書類送検は「送検」という言葉の響きから厳しい処分のように感じる方もいますが、実際には被疑者の身柄は拘束されず、日常生活を送りながら捜査の進行を待つことになります。
書類送検が行われるケース
書類送検は、主に以下のような場合に行われます。
犯罪の嫌疑はあるものの、逃亡や証拠隠滅のおそれが低く、逮捕の必要性がないと判断された場合が典型的です。また、事件の内容が比較的軽微である場合や、被疑者に定まった住居と職業があり、出頭の求めに素直に応じている場合にも書類送検で処理されることが多くなります。
さらに、逮捕・勾留後に釈放され、その後の捜査が在宅で進められる場合にも、最終的に書類送検の形で検察官に事件が送致されます。
逮捕と書類送検の主な違い
身柄拘束の有無
両者の最も大きな違いは、身柄が拘束されるかどうかです。逮捕の場合は身柄が拘束され、留置施設に収容されます。書類送検の場合は身柄の拘束はなく、通常の生活を続けることができます。
時間的な制約
逮捕の場合には、送致まで48時間、勾留請求まで24時間、勾留期間は最大20日間という厳格な時間制限が設けられており、この期間内に起訴・不起訴の判断がなされます。
これに対し、書類送検の場合には、このような厳格な時間制限がありません。検察官は書類送検を受けた後、必要な捜査を行った上で起訴・不起訴の判断を行いますが、判断までの期間は事件によってまちまちです。数週間で結論が出るケースもあれば、数か月以上を要するケースもあります。
処分の重さとの関係
書類送検されたか逮捕されたかという違いは、最終的な処分の重さとは直接的な関係がありません。書類送検であっても起訴されて有罪判決を受ける可能性はありますし、逮捕されても不起訴処分となるケースはあります。
書類送検は逮捕に比べて軽い手続きであるとはいえますが、「書類送検=軽い処分で済む」というわけではない点に注意が必要です。
書類送検された場合の今後の流れ
検察官による捜査と呼び出し
書類送検を受けた検察官は、警察から送られてきた捜査書類と証拠を精査し、必要に応じて追加の捜査を行います。多くの場合、検察官から被疑者に対して出頭の要請があり、検察庁での取り調べが行われます。
検察官の取り調べは、警察の取り調べとは異なり、起訴・不起訴の最終判断を下す立場からの質問が中心となります。検察官は、事件の全体像を把握した上で、処分を決定するために必要な事項を確認します。
起訴・不起訴の判断
検察官は、捜査の結果を踏まえ、起訴するか不起訴とするかを判断します。この判断にあたっては、犯罪事実の証拠の十分性、犯行の態様と悪質性、被害の程度、前科前歴の有無、被害者との示談の成否、被疑者の反省の態度と再発防止策などが総合的に考慮されます。
書類送検された事件の場合、もともと逮捕の必要性がないと判断された比較的軽微な事案であることが多く、適切な対応をとれば不起訴処分を獲得できる可能性は十分にあります。
起訴された場合
検察官が起訴を決定した場合、正式裁判(公判請求)または略式命令の手続きに進みます。書類送検の事案では、略式命令(罰金刑を科す簡易な手続き)により処理されるケースが比較的多く見られます。略式命令の場合、法廷での審理は行われず、書面審査のみで罰金刑が言い渡されます。
正式裁判となった場合には、法廷での審理が行われます。書類送検された在宅事件の場合、保釈の問題は生じませんが、公判期日には裁判所への出頭が必要です。
不起訴処分の場合
不起訴処分が下された場合は、事件はそこで終結し、前科がつくことはありません。被疑者に対して不起訴処分の通知がなされますが、積極的に通知されない場合もあるため、結果を確認したい場合は検察庁に問い合わせるか、弁護士を通じて確認するのがよいでしょう。
書類送検の段階でとるべき対応
早期に弁護士に相談する
書類送検された段階であっても、弁護士に相談することは極めて重要です。書類送検から検察官の処分決定までには時間的な猶予がある場合が多く、この期間を有効に活用して示談交渉や弁護活動を進めることができます。
逮捕されていないからといって弁護士への相談を先延ばしにすると、検察官の呼び出しに十分な準備なく臨むことになり、不利な結果を招くおそれがあります。
被害者との示談交渉を進める
被害者がいる事件では、検察官が処分を決定するまでに示談を成立させることが、不起訴処分を獲得するための最も効果的な方法です。書類送検の段階では時間的な余裕があるため、弁護士を通じて丁寧に示談交渉を進めることが可能です。
示談の成立、被害弁償の完了、被害者の宥恕(許し)の獲得は、検察官が起訴猶予を判断する上で極めて重視される事情です。
検察官の取り調べに備える
検察官からの呼び出しがあった場合には、弁護士と十分に打ち合わせた上で取り調べに臨みましょう。供述の方針、回答すべき事項と控えるべき事項、供述調書への署名の可否などについて、事前に弁護士の助言を受けることが大切です。
反省の態度と再発防止策を示す
書類送検から処分決定までの期間を活用して、反省の態度を具体的に示すことも重要です。被害者への謝罪文の作成、再発防止に向けたカウンセリングの受講、問題行動の改善に向けた具体的な取り組みなどは、弁護士が検察官に提出する意見書の中で有利な情状として主張することができます。
書類送検後に逮捕される可能性
書類送検されたからといって、その後逮捕されないことが保障されるわけではありません。書類送検後であっても、被疑者が逃亡するおそれがある場合、証拠隠滅を図った場合、出頭要請に応じない場合、新たな犯罪を犯した場合などには、逮捕状が発付されて逮捕に至る可能性があります。
書類送検後は、捜査機関からの連絡には速やかに応じ、誠実な態度で捜査に協力することが、逮捕を回避する上でも重要です。
おわりに
書類送検は、逮捕と比較すれば身柄を拘束されないという点で負担が軽い手続きですが、起訴されれば有罪判決を受け、前科がつく可能性があることに変わりはありません。書類送検されたことを軽く考えず、早期に弁護士に相談して適切な対応をとることが、不起訴処分の獲得に向けた最善の道です。
当事務所では、初回相談無料・365日24時間のお電話で、書類送検された方のご相談も受け付けております。検察官からの呼び出しを受ける前に、まずは弁護士にご連絡ください。
※本コラムは一般的な法律情報の提供を目的としたものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。具体的な事案については、弁護士にご相談ください。
この記事の監修者:弁護士 原 隆(福岡県弁護士会所属 登録番号52401)
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