少年事件の弁護活動
目次
少年事件の特徴
少年法の理念
少年法は、20歳未満(2022年4月1日以降は18歳未満を「少年」と定義し、18歳・19歳を「特定少年」と位置づける改正が実施されていますが、ここでは一般的な少年事件の手続として説明します)の少年が刑罰法令に触れる行為をした場合や、将来同様の行為をするおそれがある場合を取り扱う法律です。少年法は、処罰よりも「教育的措置」に重きを置いており、家庭裁判所を中心とした保護処分によって、少年の健全な育成を目指します。これは、成人の刑事事件における「社会秩序の維持」や「犯罪の予防・制裁」とは異なる視点を持つ特徴があり、少年事件においては「保護主義」という考え方が非常に重視されることになります。
少年事件の対象
少年事件は、少年法上「犯罪少年」「触法少年」「虞犯少年」に分類されます。
1. 犯罪少年:14歳以上20歳未満(改正後は14歳以上18歳未満または特定少年)で罪を犯したとされる少年
2. 触法少年:14歳未満で刑罰法令に触れる行為をしたとされる少年
3. 虞犯少年:将来罪を犯すおそれのある少年
いずれの場合も、家庭裁判所が関与し、少年鑑別所での観護措置や少年院送致・保護観察などの処分を通じ、適切な教育・指導を施すことで再非行の防止と更生を図ります。
少年事件の手続の流れ
捜査段階
非行事実が疑われる段階では、警察や検察が捜査を行い、少年を逮捕・勾留する場合もあります。もっとも、少年の場合は「少年の立ち直りを重視し、必要以上に身体拘束をしない」という方針がとられることが多く、成人ほど勾留されるケースは多くありません。しかし、非行事実の内容が重大であったり、再非行のおそれが強い場合には、逮捕・勾留が行われる可能性もあります。
捜査段階から弁護士がかかわることで、警察や検察への対応について助言を受けられたり、違法・不当な取り調べを防ぐ手段を講じてもらえたりします。さらに、捜査機関が証拠を集める過程で不利になる可能性を抑えるためにも、早期に弁護士に相談することが大切です。
家庭裁判所送致
捜査後、原則として検察は少年を家庭裁判所に送致します。家庭裁判所は少年や事件の内容を調査し、非行事実の有無や要保護性の程度を判断します。この調査においては、家庭環境、学業・職業状況、交友関係など、多角的に少年の背景を検討します。必要に応じて、「観護措置」として少年鑑別所に送致され、身体を拘束されたまま調査が続けられる場合があります。
審判手続
家庭裁判所の調査が終わると、審判が行われます。ここで非行事実の有無や処分内容が検討され、少年院送致や保護観察、不処分などが決定されます。審判の結果、不処分(証拠不十分などで非行事実が認められない場合や、保護の必要がないと判断された場合)が出されることもあれば、逆送といって、成人同様、検察に送られるケース(重大犯罪の場合)もあります。
2-4.処分内容
家庭裁判所での処分決定としては、以下のようなものが挙げられます。
1. 不処分:保護の必要がないと判断された場合
2. 保護処分
・保護観察:保護観察所の監督のもと、生活指導を受ける
・少年院送致:少年院に収容され、教育を受ける
・児童自立支援施設等送致
3. 検察官送致(逆送):重大な非行であり、成人と同様に刑事裁判を受けるべきと判断された場合
少年事件における処分は、少年の更生を促すための教育的措置としての意味合いが強く、処分内容を適切に導くことは、今後の少年の人生に大きく影響します。
少年事件における弁護士の役割
弁護活動の全体像
少年事件における弁護活動は、単に「少年を守る」ことにとどまらず、少年を取り巻く環境を改善し、再非行を防ぎ、社会復帰を支援することに主眼が置かれます。そのため、弁護士は以下のような役割を担います。
1. 捜査機関への対応:少年や保護者に対し、取り調べ方法や供述の注意点を指導し、違法・不当な捜査を受けないようサポートする。
2. 家庭裁判所の調査段階でのサポート:家庭裁判所調査官や裁判官に対し、少年の環境や性格、将来の展望などを的確に伝えられるよう支援する。
3. 審判における意見陳述:非行事実の認否や処分内容について適切な主張を行い、少年の事情や改善状況を示すことで、より適切な処分を得られるよう尽力する。
4. 更生・社会復帰支援:保護観察や少年院からの仮退院後など、少年の立ち直りをサポートするために適切なアドバイスや環境整備を行う。
早期の相談・依頼が重要
少年事件は、家庭裁判所に送致されれば「成人事件のような厳しい処分にはならない」と考える方もいますが、必ずしも軽い結果になるとは限りません。家庭環境や非行の態様によっては、厳格な処分(少年院送致など)が選択される場合もあります。また、被害者がいる事件では、示談が成立しているかどうかも処分に大きく影響します。 そのため、少年が警察に取り調べを受けている段階や逮捕・勾留された段階で、できる限り早く弁護士に相談し、助言を得ることが重要です。警察や検察、家庭裁判所に対して正しく対応していくためには、専門家の知識と経験が欠かせません。
被害者との示談交渉とその重要性
示談交渉が果たす役割
少年事件であっても、被害者が存在する場合には被害者感情の回復と損害賠償などの問題を考慮する必要があります。成人事件の場合と同様、被害者との示談交渉がスムーズに進み、被害者が加害少年の謝罪や弁済を受け入れ、許してくれる状況が得られれば、処分にも大きく影響する可能性があります。示談が成立すれば、家庭裁判所においても「被害者との関係修復が図られており、再非行の恐れが低い」と判断される要素の一つとなり得ます。
少年事件特有の配慮
少年事件で示談交渉を行う場合、単に金銭的な解決に終始するのではなく、少年の真摯な反省の態度や再犯防止に向けた具体的な取り組みを被害者に伝えることが大切です。被害者にとっては、少年からの率直な謝罪の言葉や、再発防止に向けた努力が見えなければ、示談金だけでは納得しにくいことも多々あります。 また、被害者が未成年の場合や、事件によってトラウマを抱えている場合には、示談交渉の進め方やタイミングに特別な配慮が必要となります。少年側だけでなく、被害者の心情を尊重しながら丁寧に話し合いを進めることで、双方が納得できる解決を目指すことが望まれます。
弁護士による示談交渉のメリット
示談交渉を少年と保護者のみで行おうとすると、感情的なやり取りに発展してしまったり、被害者の状況や法的な要求に対して不適切な対応をしてしまう可能性があります。また、被害者が直接の対話を望まないケースや、感情が高ぶっている場合も多く、スムーズに示談を成立させることは簡単ではありません。 こうした場合、弁護士を通じて客観的な立場から交渉を進めることによって、論点の整理や適正な損害賠償額の提示が可能となり、結果として示談が円滑にまとまりやすくなります。示談が早期に成立すれば、少年自身の負担も軽減され、また家庭裁判所での審判においても有利な事情として斟酌されることが期待できます。
適切な弁護活動で目指すべきもの
再非行防止と更生支援
少年事件においては、少年が将来にわたって再び非行に走らないよう、生活環境や心理的な問題点を洗い出し、改善策を講じることが大切です。弁護士は、調査官や保護観察官と連携し、たとえば家庭内でのコミュニケーション問題、学校でのいじめ被害、非行グループとの関わりなど、多面的に少年の状況を把握します。 また、必要に応じてカウンセリングや医療機関との連携を図ることで、少年が抱えている問題を根本的に解決する支援を行います。こうした取り組みを審判段階で主張・立証することにより、家庭裁判所が少年の更生への具体的な道筋を確認できるため、保護処分の適切性をより高く評価してもらえる可能性が高まります。
家族や保護者へのサポート
少年事件では、保護者が大きな役割を果たします。保護者の監督責任や生活指導が適切に行われているか、再非行を防止する環境が整えられるかといった点は、処分に直結する重要な要素です。弁護士は、保護者に対し今後の接し方や監督方法、環境改善のための具体的なアドバイスを行うことで、家庭の中での再非行防止体制を確立する手助けをします。 さらに、保護者自身が罪悪感や周囲の目などに苦しみ、適切に少年をフォローできない状況も少なくありません。弁護士が間に立ち、保護者に対する精神的サポートや情報提供を行うことで、保護者自身も立ち直りに向けた意識を高めることができます。
被害者との和解と社会復帰の促進
少年が被害者と和解し、示談が成立すれば、被害者感情がある程度回復するだけでなく、少年自身の負担が軽減され、再スタートを切る環境が整いやすくなります。弁護士は、少年の真摯な謝罪の気持ちと再犯防止への意志を的確に伝えることで、被害者との間にわだかまりを残さずに話し合いを進められるようにします。
こうした和解の経験は少年自身にとっても、被害者の痛みや社会的責任を自覚する貴重な機会となります。社会復帰後の生活においても、事件を風化させるのではなく、自らの行為を振り返り、教訓を活かしていく姿勢が重要です。そのためにも、弁護士がカウンセラーや教育機関などと連携し、継続的に少年をフォローアップしていくことが望まれます。
当事務所が提供するサポート
示談交渉に強い弁護士の強み
当事務所は、刑事事件全般、特に示談交渉に豊富な経験を有しています。少年事件においても、被害者感情に配慮しながら、少年・保護者・被害者の三者間の意思疎通をスムーズに進めるノウハウを持ち合わせています。示談交渉では、被害者との信頼関係を構築することがまず重要であり、誠実かつ迅速な対応が求められます。当事務所では、担当弁護士が被害者と直接連絡を取り合い、事件の経緯や少年の反省状況、再犯防止策などを丁寧に説明することで、できる限り円満な解決を図ります。
早期のアドバイスと方針決定
少年が逮捕・勾留された場合、家族は大きな不安を抱えます。当事務所では、24時間体制の相談窓口や迅速な初回接見によって、少年の状況をいち早く把握するとともに、保護者への状況報告や今後の見通しをわかりやすくご説明します。
捜査段階での取り調べ対応や家庭裁判所への提出資料の準備など、スピーディーに取り組むことで、少年に不利な事情が積み重なるのを防ぎ、処分の軽減や適切な保護処分を得やすくします。
環境調整・更生プログラムの提案
当事務所は、心理カウンセラーや少年院・保護観察所の元職員など、少年更生に精通した専門家とのネットワークを活かし、少年の抱える問題点の分析や、再非行防止のための具体的なプログラムを提案します。たとえば、学校復帰や職業訓練、アルバイト先の紹介など、社会との接点を失わないような支援策を講じることで、少年が健全な環境で成長できる土台を整えていきます。
保護者への継続的サポート
保護者との面談や電話相談を通じて、家庭内での対応のしかたや、進路・生活指導のアドバイスを継続的に行います。また、必要に応じて行政機関や医療機関と連携し、家庭そのものの課題解決を目指すことも重要です。当事務所では、少年のみならず保護者を含めた家族全体を支援対象と考え、必要な専門家や機関とのパイプ役となります。
少年事件は再スタートの機会
少年事件は、成人事件に比べて処罰色が弱く、「立ち直りのためのチャンス」が与えられる仕組みになっています。これは、少年の可塑性(成長や環境による変化の可能性)を前提に、「社会における更生の機会を確保することで、再犯や再非行を防ぐ」という考え方に立脚しています。
もっとも、その機会を活かせるかどうかは、少年や家族が適切なサポートや指導を受けられるかにかかっています。弁護士、調査官、保護観察官、カウンセラー、学校関係者など、多角的な協力体制を整え、少年の抱える問題に丁寧に向き合うことで、初めて「更生と再スタート」が現実味を帯びるのです。
まとめ
少年事件の弁護活動は、少年を法的に守るだけでなく、少年が将来にわたって非行を繰り返さないようにサポートし、健全な社会復帰を目指すことが大きな目的となります。家庭裁判所での処分においては、被害者との和解が成立しているかや、少年自身や保護者の再犯防止への取り組みが十分に行われているかが、重要な判断材料となります。
当事務所では、刑事事件の示談交渉に長年取り組んできた経験と、少年事件における更生支援の実績を活かし、少年とその家族が安心して再スタートを切れるよう丁寧に伴走いたします。少年事件は、早期の弁護士介入が結果を左右することが多い分野です。もしお子様が非行を疑われたり、警察の捜査を受けている状況にある場合には、一日でも早く専門家に相談し、今後の方針を固めることが重要です。
示談交渉に力を入れることで、被害者感情の修復と少年の更生を両立させる可能性が高まります。弁護士が間に立ち、誠実かつ柔軟な姿勢で被害者との話し合いを進めていくことは、家庭裁判所での審判結果に好影響を与えるだけでなく、少年が将来同じ過ちを繰り返さないための貴重な経験となります。
少年事件は、手続や扱われる概念が成人事件とは大きく異なる点が多く、家族だけで解決を図ろうとすると混乱や不利益を被るリスクがあります。だからこそ、専門家である弁護士を早期に頼り、適切な弁護方針を立てることが肝要です。当事務所は、少年事件に特化したノウハウを持ち、被害者対応にも注力している強みを活かし、お子様やご家族にとって最善の解決を目指します。少年事件のご相談や示談交渉に関するご質問がございましたら、遠慮なく当事務所へお問い合わせください。
少年の未来は、ほんの些細なきっかけで大きく変わる可能性があります。一度の非行行為がすべてを決定づけるわけではなく、適切な指導や支援によって再び正しい道を歩めるようになるケースは少なくありません。私たちは、その「再スタートのきっかけ」を一緒につくるパートナーでありたいと願っています。家族や社会の支えの中で、少年が二度と非行に走らず、新たな一歩を踏み出せるよう、全力でサポートいたします。
この記事の監修者:弁護士 原 隆