業務上横領事件の示談金の相場はいくらなのか?示談交渉について解説 |福岡で弁護士が刑事事件(示談交渉)をスピード解

原綜合法律事務所 対応地域/福岡県及び近県(九州及び山口県)
弁護人選任検討の方専用の相談ダイヤル/050-7586-8360/【24時間受付・初回無料(加害者本人と親族のみ)】 メールでのご相談も受付中

業務上横領事件の示談金の相場はいくらなのか?示談交渉について解説

目次

はじめに

業務上横領事件(※以下、「業務上横領」といいます)の示談金(慰謝料)の相場がわからないと、適切な額で示談を成立させるのは難しいものです。業務上横領は、会社や顧客などとの信頼関係を裏切る行為であることが多いため、被害者の処罰感情は強くなりがちです。しかし、刑事事件では被害者との示談を成立させることで、加害者(被疑者・容疑者)が不起訴処分となったり、刑の減軽を図ったり、勾留を回避するなどのメリットを得られる可能性があります。

一方、被害者からしても、業務上横領という被害によって生じた損害を金銭的に回復したり、加害者に二度と同じことを繰り返さないように制約をかけたりするメリットがあるため、示談に応じるメリットがゼロではありません。

しかし、「実際にはどのくらいの金額を請求すればよいのか分からない」「示談すれば本当に不起訴や減刑の可能性が高まるのか」といった疑問をお持ちの方も多いでしょう。そこで、本コラムでは、

  • 業務上横領事件における示談金(慰謝料)の相場
  • 示談交渉を進める具体的な方法
  • 示談を成立させることの加害者・被害者双方のメリット

などについて解説いたします。業務上横領事件の示談を検討されている方や、今後の流れを知りたい方に少しでも参考になれば幸いです。

業務上横領とは何か?

業務上横領の定義

まず「業務上横領」とは、刑法253条に規定されている犯罪です。「業務」とは、職務上継続して行う事務・業務をいい、そこに基づいて預かっている他人の物(多くの場合は金銭)を、自分のものにしてしまう、あるいは他人に譲渡してしまうなどの行為が該当します。
たとえば、経理担当者が会社の現金や預金を横領する、営業職が顧客から預かった売上金を着服する、運送業で顧客の荷物や代金を自分のものにしてしまう……といった事例が典型例です。

業務上横領の法定刑

業務上横領の法定刑は、10年以下の懲役となっています。
同じ横領でも、単純横領(刑法252条1項)の法定刑は5年以下の懲役です。これに対し、業務上横領は「業務」という立場や信頼を悪用しているため、より重い刑が科される可能性があります。罰金刑の規定はなく、有罪判決を受けた場合は懲役刑となるのが一般的です。

業務上横領事件の示談金の相場

業務上横領で示談金が発生する要素

業務上横領事件の示談金の中心は、被害額の補填・返還です。さらに、加害行為によって被害者が被った信用失墜や精神的苦痛に対する慰謝料や、問題解決に要した弁護士費用等を加算して示談金とするケースも珍しくありません。被害者が法人(会社)である場合でも、役員や代表者が「裏切られた」「許せない」という感情を強く抱いていると、その分だけ精神的苦痛(慰謝料)相当額を請求されることがあります。

示談金の相場

盗撮事件などのように「概ね30万円前後」と単純に言い切れるような“統計上の中間値”があるわけではありませんが、業務上横領の示談金には以下のような傾向があります。

  1. 横領額を全額返済(あるいは弁済)する
  2. 横領額に対して一定割合の上乗せ金や慰謝料を支払う
  3. 調査費用や弁護士費用などが加算される

横領額が数十万円規模であれば、全額返還し、さらに10〜30%程度を上乗せすることで示談が成立することもあります。一方、横領額が数百万円、数千万円に及ぶ場合、上乗せ分だけで数百万円になるケースもあるため、“相場”を一概に示すのは難しいのが実情です。

もっとも、横領額の返済に加えて100万円〜300万円程度の慰謝料を請求される事例もあり、被害者との交渉次第で示談金の総額が非常に大きくなるケースがあります。

業務上横領事件の特徴・示談金が高額になるケース

業務上横領では、以下のような事情があると示談金が高額になる傾向があります。

被害額が大きい・常習的であった場合

横領行為が長期・常習的に行われている場合や、その結果として被害額が数百万円〜数千万円にのぼる場合は、示談金も必然的に高額化しやすいです。横領された資金を回収する必要があるだけでなく、「長期間にわたり裏切られた」という被害者の処罰感情が重くなるため、示談交渉自体が困難になることも珍しくありません。

会社の信用失墜に発展している場合

業務上横領によって会社の信用が低下し、取引先や顧客からの信用を失った場合、会社が受ける損害は単なる横領額だけにとどまりません。たとえば外部に横領発覚の事実が広まり、業績悪化や取引停止などの実害が生じた場合、被害者会社は**「横領額+αの逸失利益」**を請求してくる可能性が十分に考えられます。

従業員以外との共犯や組織的関与がある場合

複数人が組織的に業務上横領を行っていた場合や、取引先の担当者と結託していた場合などは、行為の悪質性が高いと見なされやすく、被害者側は示談交渉でかなり高額の賠償を請求してくることが多いです。さらに余罪が次々と発覚するケースもあり、示談交渉が長期化・複雑化する要因になります。

会社だけでなく顧客や取引先からの被害届が出る場合

業務上横領の被害者は会社や組織であることが多いですが、顧客や取引先の資金を横領していたとなると、被害者が複数に及ぶ可能性があります。その場合、示談すべき相手が複数となり、結果的に支払う示談金の合計額が大幅に増えることがあります。

業務上横領事件で示談を成立させるためのポイント

業務上横領事件において、示談を成立させるためには以下の点を踏まえる必要があります。

迅速な返済プランや資金手当てが不可欠

業務上横領では、被害者が最も重視するのは**「横領された資金がいつ・どれだけ返ってくるか」**という点です。被害額全額を一括返済できればベストですが、分割払いしかできない場合でも、明確で実現可能な返済計画を提示することが示談交渉のカギになります。

加害者本人が直接交渉しようとしない

被害者である会社やその代表者が加害者に対して強い怒りや不信感を抱いている場合、加害者本人が直接示談を持ち掛けても応じてもらえないことがほとんどです。会社内部の問題として話がまとまる可能性がある場合でも、刑事事件化してしまっていると、社内の判断だけでなく警察・検察の捜査も進んでいます。
弁護士を通じて示談の意向を示し、条件を詰めていくことが重要です。

被害者の実質的なメリットを提示する

会社や組織が被害者の場合、刑事罰を求める一方で、できるだけ損害回復を早期に実現したいという思いがあります。つまり、示談金の支払いが見込めるなら、刑事罰をやや軽くしても(もしくは不起訴に協力しても)構わないと考える被害者側が少なくありません。
**「示談に応じることで早期に全額返済を得られる」**という被害者側メリットを示すことで、示談交渉が進む余地が生まれやすくなります。

弁護士を通じて示談交渉するメリット

弁護士が示談交渉を担当すると、被害者への謝罪や賠償の意思を伝えつつ、加害者にとって不利すぎない条件で交渉をまとめることが期待できます。加害者本人が示談交渉をしてしまうと、感情的対立が激化したり、法外な示談金を求められてしまうリスクが高まります。弁護士が間に入ることで、相場に沿った賠償額や返済条件での合意を目指すことが可能となります。

業務上横領事件で示談を成立させる加害者側のメリット

加害者側が示談を成立させるメリットは多岐にわたります。

不起訴処分を得られる可能性が高まる

業務上横領は被害金額が大きく、原則として不起訴になりにくい傾向があります。しかし、示談が成立し、被害者が**「処罰を望まない」「被害届を取り下げる」といった意思を明確にしてくれれば、検察が不起訴**とする可能性は高まります。これは加害者にとって非常に大きなメリットです。

逮捕・勾留を回避または早期釈放の可能性が高まる

示談が成立していれば、警察も「逃亡や証拠隠滅のおそれが小さい」「被害者との間でトラブルが解消している」と判断し、逮捕や勾留を回避できる場合があります。既に逮捕・勾留されている場合でも、示談が成立すれば早期に身柄が解放される可能性が高まります。

有罪判決・実刑を回避しやすくなる

万が一起訴され、公判に至った場合でも、示談が成立していることは量刑に大きく影響します。被害者が「既に全額弁済を受けており、宥恕(ゆうじょ)している」旨を述べると、執行猶予付き判決や減刑を得られる可能性が高まります。業務上横領は懲役刑のみが定められていますが、示談が成立していれば執行猶予が付く可能性も十分にあります。

業務上横領事件で示談を成立させる被害者側のメリット

一方、業務上横領事件の被害者側も示談を結ぶメリットがいくつかあります。

損害回復を早期に実現できる

加害者を刑事告訴して、有罪判決を得たからといって、横領されたお金が必ず返ってくるわけではありません。刑事罰は加害者が国に対して受けるものであり、被害者が直接的に金銭を受け取れるわけではないからです。
その点、示談をすれば加害者からの返還金や解決金(慰謝料・示談金)を確保できるため、被害者としても実質的なメリットがあります。特に分割払いを認めたとしても、示談書で合意しておけば、後々の回収がしやすくなります。

追加のトラブルを回避できる

示談書に**「今後、会社や従業員、関係者への接触を禁止する」**などの条件を盛り込むことも可能です。業務上横領とあわせて脅迫や不正アクセスなどの二次被害が懸念される場合でも、示談の中で違約金条項を設定しておけば、被害者の不安を和らげられます。

裁判に費やす手間と費用を省ける

被害者として横領分の返還や損害賠償を民事訴訟で求める場合、費用や時間がかかります。判決を得たとしても、加害者に資力がなければ強制執行をするしかなく、さらにコストが発生します。一方、示談交渉で合意が成立すれば、裁判を起こすことなく一括または分割の返還金を確実に得ることができ、余計な労力を割かずに済むのです。

示談交渉の流れと弁護士に依頼するメリット

示談交渉の基本的な流れ

  1. 弁護士の選任
    加害者(あるいはその家族・代理人)が示談交渉を希望する場合、まずは刑事事件に強い弁護士に依頼します。

  2. 被害者側とのコンタクト
    弁護士は警察・検察の協力を得ながら、または会社代表者の連絡先を確認し、示談の意向を伝えます。被害者が同意すれば交渉へと進みます。

  3. 条件の提示・調整

    • 示談金の金額(横領金の返還、慰謝料・解決金の額)
    • 支払方法(一括・分割)
    • 退職に関する事項・再発防止などの諸条件
      これらを巡って双方が合意できるラインを探ります。
  4. 示談書の作成・締結
    示談内容を正確に書面化し、加害者・被害者双方が署名押印します。必要に応じて公正証書にするなど、強制執行可能な形式をとることもあります。

  5. 示談書の提出(捜査機関・裁判所へ)
    示談が成立したら、弁護士が警察や検察、あるいは裁判所に示談書を提出し、不起訴・処分保留・執行猶予判決などを目指します。

弁護士に依頼する最大のメリット

  • 法律知識と交渉スキルを活用し、相場に沿った示談をまとめられる
    加害者本人が被害者の会社と直接やりとりすると、感情的対立で示談が決裂するリスクが高いです。弁護士ならば、過去の事例や判例を踏まえ、冷静かつ妥当な金額・条件を提示できます。

  • 警察・検察に対する釈放や不起訴の働きかけが期待できる
    弁護士が示談成立に向けて動いていることを警察や検察が把握すると、勾留の必要性が低いと判断されることが多々あります。

  • 時間と手間を大幅に削減できる
    法的手続きや書類作成を弁護士が一括して行うため、加害者本人やその家族が直接奔走する手間が省けます。

まとめ 業務上横領事件の示談交渉は刑事事件に強い弁護士へ相談を

業務上横領事件では、被害者との示談が成立すれば、返済プランが決まることによる金銭面の安定や、不起訴・減刑の可能性など、多くのメリットがあります。しかし、会社や組織の怒り・不信感は強いため、加害者本人が直接交渉することは非常に難しく、場合によっては感情のもつれで示談が破談になってしまうケースも少なくありません。

そのため、業務上横領の疑いをかけられた場合は、できるだけ早期に刑事事件に強い弁護士へ相談することが重要です。弁護士が間に入ることで、被害者と冷静に交渉し、相場に沿った示談金額・返済条件で合意を得られる可能性が高まります。結果として、不起訴処分や執行猶予判決につながり、人生を大きく左右する事態を回避できるかもしれません。

また、被害者側としても示談交渉に応じることで、早期に損害を回復し、追加のトラブルを避けられるメリットがあります。会社内部の問題として処理しやすくなるだけでなく、横領被害の長期化による業績・信用低下などのダメージを最小限に抑えることにもつながります。

もし現在、業務上横領の問題でお悩みの方や、警察・検察から事情聴取を受けている段階の方は、一度、弁護士に相談してみることをおすすめします。示談交渉を含め、最善の解決策を探ることで、今後の人生を左右する大きな問題をスムーズに乗り越えられる可能性が高まるでしょう。

【まとめポイント】

  • 業務上横領では、**横領額の返還+慰謝料(または解決金)**という形で示談金が決まることが多い
  • 被害者が法人・会社の場合でも、処罰感情は強くなりやすく、示談交渉が難航するケースも多い
  • それでも示談成立により、不起訴処分勾留回避・早期釈放執行猶予付き判決など、加害者にとって大きなメリットを得られる可能性がある
  • 被害者も、早期かつ確実な損害回復追加トラブル回避といったメリットがあるため、示談に応じるメリットはゼロではない
  • 示談交渉は感情的対立を避けるためにも、刑事事件の実績が豊富な弁護士に依頼するのが望ましい

業務上横領事件でお困りの際は、ぜひ一度、当事務所へご相談ください。示談交渉から刑事手続き全般まで、あなたの状況に応じて最善のサポートを提供いたします。

刑事事件の弁護人選任を検討されている方の初回相談は無料【24時間受付】弁護士が対応可能な場合はそのまま直通で無料電話相談が可能です

刑事事件はスピードが重要!今すぐ無料相談