ストーカー事件で示談するには? 弁護士に相談すべき理由と示談金の相場について解説
示談ストーカー事件は逮捕される可能性が高いですが示談は簡単ではありません。加害者は警察から被害者と接触することの禁止命令が出されているからです。そのため、弁護士に相談、依頼しないと示談成立は難しいです。示談金の相場や逮捕されるケースについて解説します。
目次
ストーカー規制法の示談は弁護士に依頼が必須? 逮捕されるケースや示談金の相場を解説
ストーカーの加害者が被害者と示談するには、弁護士への依頼が必須です。
示談が必要なほどのストーカーをしてしまった場合は、警察から警告や接近禁止命令が出されていることが多く、加害者本人が被害者本人と連絡を取る事自体が違法とされてしまい、逮捕される原因になりかねないからです。
被害者への謝罪の意思がある場合でも、直接出向くのではなく、必ず、弁護士に相談し、弁護士を介して謝罪し、示談を持ちかける必要があります。
ストーカーとは?
ストーカーとは、つきまとい等によって被害者に迷惑をかけたり、恐怖を覚えさせたりする行為のことですが、その中でも、ストーカー規制法(ストーカー行為等の規制等に関する法律)に規定されている行為に抵触する場合を指します。
加害者がストーカー規制法に違反する行動をしている場合は、被害者から相談を受けた警察が「警告」や「禁止命令」を出します。
また、悪質だと判断された場合は、ストーカー規制法に基づき、警察が加害者を逮捕することもあります。
ストーカー規制法で禁止されている「つきまとい等」とは?
ストーカー規制法には、何人もつきまとい等をして相手方に不安を覚えさせる行為をしてはならないと定められています(ストーカー規制法3条)。
被害者の日常生活が害されるような形で、つきまとい等を反復している場合は、「ストーカー」と認定されて、ストーカー規制法による処分の対象になります。
つきまとい等とはどのような行為か確認しましょう。
つきまとい
被害者の住居、勤務先、学校の付近などで見張ったり、つきまとう、待ち伏せ、立ちふさがる、うろつく行為のことです。
監視していると伝える
行動を監視していることを伝えたり、示唆して不安を覚えさせる行為です。
面会や交際を求める
相手が拒否しているのに面会や交際を求める行為です。
著しく粗野又は乱暴な言動
暴言を吐いたり、暴力を振るう仕草をすることです。実際に暴力をふるった場合は刑法上の暴行罪にも該当します。
迷惑電話やSNS
無言電話や電話を繰り返しかけることです。FAX、電子メール、SNSを繰り返し送ることも含みます。
汚物の送付
汚物、動物の死体、その他の穢らわしいものを送りつけたり、被害者の自宅等に放置することです。
名誉を害する事項を告げること
被害者の名誉毀損になる事項を告げたり、知りうる状態に置くことです。
性的羞恥心を害する事項を告げること
性的羞恥心を害する事項を告げたり、知りうる状態に置くことです。例えば被害者の裸の状態の画像をSNSなどで送ることが該当します。
位置情報無承諾取得等
相手方の承諾なくGPSの位置情報を取得したり、GPS発信機を取り付ける行為です。
ストーカー規制法による処分とは?
ストーカー規制法による加害者への処分には、警察からの「警告」、「禁止命令」と他の刑事事件同様の「逮捕」があります。
警告
警告は、警察本部長等(警視総監、道府県警察本部長又は警察署長)の名前でストーカー行為をやめるように警告するものです。
被害者が警察に相談し、加害者に警告してほしいと申し出た場合に発せられます。
警察は加害者を特定したうえで、加害者がストーカー行為を行っており、今後も繰り返される恐れがあると判断した場合に、加害者に対してストーカー行為を行わないように警告します。
禁止命令等
禁止命令等は、都道府県公安委員会の名前で、ストーカー行為の禁止を命じるものです。
禁止命令では、ストーカー行為を禁止するとともにストーカー行為を防止するためにすべきことを命じられることもあります。
被害者が警察に相談し、加害者に禁止命令等を出してほしいと申し出た場合のほか、公安委員会が判断して職権で禁止命令等を出すこともあります。
加害者が禁止命令等に従わない場合は、拘禁刑又は罰金の対象となります。
逮捕
ストーカー規制法に抵触するストーカー行為を行った場合は逮捕される可能性もあります。
ストーカー規制法では、次のような刑罰が設けられています。
- ストーカー行為をした者
- 1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金
- 禁止命令等に違反した者
- 6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金
- 禁止命令等が出されているのに違反してストーカー行為をした者
- 2年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金
警告が出されていない段階でも、ストーカー行為が確認されて悪質と判断された場合は、警察が逮捕することもありますし、起訴されて刑罰を受けてしまう可能性もあるということです。
また、警告を無視しても、直接の刑罰はありませんが、逮捕の可能性はあります。
警察から「警告」、「禁止命令」が出された場合の対処方法
警察からストーカー規制法に基づく警告を受けた場合は、ストーカー行為をやめるのが最善です。
また、禁止命令が出された場合は、その命令に従うべきです。
警告に従わない場合でも、直接の刑罰はありませんが、被害者から刑事告訴される危険性が高まりますし、警察が逮捕に動くこともあります。
禁止命令に従わない場合は刑罰の対象になります。
さらに、禁止命令等を無視してストーカー行為を繰り返した場合は、刑罰がより重くなることから、逮捕される可能性が高くなります。
なお、禁止命令等の効力は1年間ですが、被害者の申し出や職権によって、1年ごとに更新できるようになっています。
そのため、1年我慢すれば禁止命令等が解かれるとは限りません。
「警告」、「禁止命令」が冤罪だと感じる場合は?
警察から「警告」、「禁止命令」を受けた方の中には、冤罪だと考える方もいらっしゃると思います。
このような場合は、被害者と会って誤解だと主張したり、文句を言いたくなることもあるかもしれません。
ただ、禁止命令が出されている状態で、被害者に接近することは、ストーカー規制法違反になり、あなたを逮捕するための口実になってしまいます。
却ってトラブルが大きくなるので、被害者に直接連絡を取ることは止めましょう。
この場合は、弁護士に相談するのが最善です。
弁護士に警告や禁止命令が出されるまでの経緯を説明して、冤罪かどうか判断してもらいましょう。
弁護士が、警告や禁止命令が不当なものだと判断した場合は、相応の対策を講じることができます。
ストーカー事件で逮捕を避けるには?
ストーカー事件で禁止命令等が出された場合、加害者としてはこれを機に被害者との接触を断つのが最善です。
引っ越しをする等して、接触できない状況にするのもよいでしょう。
しかし、仕事をしていればそう簡単に引っ越しはできませんし、被害者側が引っ越すとは限りません。
そのため、被害者と偶然、出くわしてしまい、その結果、禁止命令に違反したとして被害者から通報されてしまうリスクもあります。
ストーカー事件で逮捕を避けるにはどうすべきかを見ていきましょう。
警告、禁止命令を守る
ストーカー事件で逮捕を避けるためには、警察から出された警告、禁止命令を守るのが基本です。
こちらにも言い分があり、納得できない場合でも被害者に直接抗議するなどの行為に出た場合は、通報されたり、刑事告訴されてしまう恐れがあるので絶対に避けましょう。
言い分がある場合は、弁護士に相談し、弁護士に対処してもらうようにしましょう。
被害者に真摯に謝罪する
加害者が警告、禁止命令を守っていても、偶発的に接触してしまい、その結果、ストーカー行為を続けているとみなされてしまうおそれもあります。
こうした事態を避けるためには、被害者に真摯に謝罪し、反省しており、もはやストーカー行為を行う意図はないことを知って貰う必要があります。
ただ、謝罪するにしても、そのためにメールを送ったり、手紙を書いたりすること自体が、禁止命令に抵触するおそれもあります。
やはり、弁護士に相談したうえで、どのような形で謝罪の意思を伝えるのが最善か検討しましょう。
相手方に謝罪を申し入れるには弁護士を介するのが確実な方法と言えます。
被害者に示談の申し入れをする
被害者との示談は、刑事事件で逮捕や起訴を避けるための有効な手段ですが、ストーカー事件でも逮捕の回避や不起訴処分の獲得のために有効です。
ストーカー事件で示談が必要なのは、禁止命令等が出されている場合です。
この場合、警察は事態を重く見ている可能性が高く、逮捕に踏み切ることもあります。
禁止命令等に違反してしまった場合も、逮捕される可能性が高いです。
示談を行う場合は、早期に対応してもらうことがポイントです。
逮捕前に示談を成立させておけば、逮捕を回避できることもあります。
逮捕された場合は、他の刑事事件と同様に勾留されて最長で23日間にわたり身体拘束が続くことがありますが、早期に示談を成立させれば、早期釈放も見込めます。
逮捕後は送検されて、検察官が起訴するか判断しますが、検察官が判断を下す前に示談を成立させれば、不起訴にしてもらえることもあります。
起訴された後は、裁判で有罪となってしまう可能性が高く、前科が付いてしまうことになります。
被害者に受領同意書を書いてもらう
ストーカー事件の示談では、示談書に「被害者が加害者を許す」、「宥恕する」、「加害者の処罰を望まない」といった文言を入れるのが一般的です。
しかし、被害者側の処罰感情が大きい場合は、被害者はこれらの文言が入った示談書への署名を拒否することもあります。
示談金は受け取るが、示談書への署名には応じないということもあります。
このように話し合いが難航するケースでは、示談書は下げて、示談金は受け取りましたという趣旨の受領同意書への署名を求める方法も検討されます。
受領同意書があれば、検察官としても被害者の被害が弁償されたものと判断して、不起訴処分とする可能性が高まります。
ストーカー事件の示談書に記載すべき事項
ストーカー事件の示談書に記載すべき事項は次のとおりです。
- 謝罪条項
- 被害者への謝罪の意思を示します。
- 示談金の支払いに関する条項
- 金額や支払方法、期日などについて記載します。
- 宥恕条項
- 被害者が加害者の謝罪を受け入れて許すという文章です。
- 接触禁止条項
- 加害者が被害者に二度と接触しないなどの取り決めを行うことで被害者に安心してもらうための条項です。
- 誓約条項
- 加害者が二度とストーカー行為をしないことを誓うとともに、被害者側も被害届を取り下げたり、禁止命令更新の申し出をしないといった内容です。
- 清算条項
- 民事上の損害賠償請求についても清算されたことを確認します。
- 秘密保持条項
- 示談内容を加害者と被害者の双方が他人に口外しないという内容です。
以上が、一般的な記載事項ですが、解決やトラブルの回避のために必要な事項があれば盛り込みます。
ストーカー事件で示談が難しいケースは?
悪質なストーカー事件の場合は、示談が難しいこともあります。
ストーカー事件は、ストーカー規制法に違反するだけでなく、刑法上の様々な罪を同時に犯していることもあります。
例えば、つきまといをした上で被害者の持ち物や衣服などを汚したり、壊したりすると器物損壊になります。
被害者の持ち物を盗んだ場合は窃盗ですし、被害者の住居に侵入した場合は、住居侵入罪になります。
被害者に対して直接、脅迫や暴行を行えば、脅迫罪、暴行罪になりますし、怪我を負わせれば傷害になります。
最悪の場合は、殺人事件に発展してしまうケースもあります。
このように、刑法上の様々な犯罪も犯している場合は、被害者側が示談に応じてくれませんし、手口が悪質と判断すれば警察も逮捕に踏み切るしかありません。検察官も起訴する可能性が高くなります。
有罪判決が出されて執行猶予なしの実刑となることもあります。
ストーカー事件の示談金の相場
ストーカー事件の示談金の相場は、30万円〜200万円と言われています。
金額の相場の根拠は、ストーカー規制法違反の罰金刑の金額です。罰金は、50万円から200万円なので概ねの目安となります。
示談金の内訳は、被害者に精神的苦痛を与えたことの慰謝料が主ですが、その他の損害賠償や費用が含まれることもあります。
ストーカー事件の示談金が高額になるケースは?
ストーカー事件の示談金は30万円〜200万円と幅が広いですが、高額になるのは次のような場合です。
禁止命令等に違反した場合
禁止命令等に違反した場合は、罰金刑が最高200万円になりますし、被害者の処罰感情も高まります。
そのため、示談金の額も高額になる傾向があります。
長期間にわたりストーカーしていた
ストーカーしていた期間が長い場合は、被害者が長期間にわたり恐怖を覚えていたことになり、精神的苦痛の程度も重いと考えられます。
そのため、示談金の額も高額になる傾向があります。
悪質なストーカー行為の場合
ストーカー行為だけでなく、住居侵入罪などの刑法上の犯罪も犯していた場合は、より悪質性が高まりますから、示談金の額も高額になる傾向があります。
被害者の精神的ショックが大きい場合
被害者が、ストーカーの恐怖に怯えるあまり、日常生活が困難になったり、仕事などで支障が出てしまったり、うつ病や、PTSDと言った精神疾患を患ってしまった場合は、示談金の額も高額になる傾向があります。
まとめ
ストーカー事件では、禁止命令が出されていることが多く、加害者が被害者に直接謝罪することは難しいですし、示談交渉を行うことも現実的ではありません。
そのため、弁護士に相談し、弁護士を介して謝罪や示談を試みる必要があります。
ストーカー事件の加害者とされてしまった場合は、被害者に対して色々と主張したいことがあるかと思いますが、さらなるトラブルを招いたり、事態を悪化させないためにも、まずは、弁護士にご相談ください。