法人・企業が刑事責任を問われたケースの示談交渉:経営者が知っておくべきリスク管理と対策」 |福岡で弁護士が刑事事件(示談交渉)をスピード解

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法人・企業が刑事責任を問われたケースの示談交渉:経営者が知っておくべきリスク管理と対策」

はじめに

企業活動の多様化やグローバル化に伴い、法人・企業が刑事責任を問われる可能性も以前に比べて増しています。食品偽装、品質データ改ざん、インサイダー取引、情報漏洩、業務上過失致死傷など、企業が刑事問題に発展するケースは決して珍しくありません。さらに近年では、コンプライアンスの意識向上とともに社会からの監視の目も厳しくなり、企業や経営者に対する非難は一層大きくなる傾向にあります。

もし企業が刑事事件として立件されるような状況に陥った場合、経営者としては事態の収束を図るために示談交渉を検討することになるかもしれません。ただし、刑事事件の示談交渉は民事事件のそれとは異なる特徴があり、また刑事事件固有のリスクや手続き面での注意点も存在します。本コラムでは、法人・企業が刑事責任を問われたケースにおける示談交渉の意味とプロセス、そして経営者が知っておくべきリスク管理や対策について詳しく解説していきます。


1. 法人・企業が刑事責任を問われるとは

法人の刑事責任の原則

日本法において、原則として「人」が行った犯罪行為について刑事責任を負うのはその行為をした個人ですが、一定の法律(特別法)では法人自体の行為とみなされ、法人に対して罰金刑などが科される場合があります。これがいわゆる「両罰規定」と呼ばれるもので、例えば労働安全衛生法、下請代金支払遅延等防止法(下請法)、独占禁止法など、多くの特別法には両罰規定が設けられています。違反行為を行った個人の責任だけでなく、法人としても刑事罰の対象となり得るのです。

企業側の「管理責任」

企業活動は従業員や役員など多くの人々によって担われていますが、組織の管理体制に問題があった場合、たとえ経営陣が直接関与していなくとも、「組織的な違反」とみなされることがあります。経営者のコンプライアンス意識の欠如や内部統制システムの不備が原因で起きた犯罪行為については、企業全体に責任が及ぶことは避けられません。さらに社会的な非難は法人や経営者本人に対して強く向けられるため、そのダメージは大きく、経営の継続に深刻な影響が及ぶこともあります。

刑事事件における示談交渉の基本

示談交渉とは何か

示談交渉は、被害者(またはその遺族など関係者)との間で「民事上の損害賠償責任」や「今後の紛争防止」などを目的として話し合い、合意を取り付ける行為です。刑事事件においても、被害者との示談が成立することで、加害者側(あるいは法人側)が一定の金銭的補償や謝罪、再発防止策の実施などを約束し、それを被害者が受け入れることで「被害感情の緩和」を図る効果が期待できます。

ただし、刑事事件の示談交渉はあくまでも「被害者との関係」における解決を目的とするものであり、検察による起訴や裁判所による刑事処分そのものを直接免れるわけではありません。しかし、示談が成立し、被害者が「厳しく処罰を求めない」という嘆願書を提出するなどの事情があれば、検察による起訴猶予や裁判所による刑の減軽などにプラスに働く可能性があります。つまり、示談交渉には「刑事手続の結果」にも影響を与え得る重要な意味があるのです。

示談金の意義と相場

示談において、もっとも注目されるのが「示談金」です。示談金は被害者の被った損害を金銭的に填補することを主眼とするものの、刑事事件である以上、被害感情の鎮静を図る意味合いも大きいと言えます。相場は事件の性質や被害の程度によって大きく異なりますし、法人が相手である場合、被害者側が高額な示談金を求めることも多々あります。一方で、被害者側と折り合いがつかないほど高額な要求を突きつけられるケースもあり、示談の成立が難航することも珍しくありません。

このように金額面での合意は示談成立における大きなハードルとなりますが、同時に「謝罪の方法」や「再発防止策」をどのように取り入れるかなど、金銭以外の条件も示談交渉においては重要となります。企業の場合は特に、再発防止策やコンプライアンス体制の見直しなど、具体的な改善策を提示することで被害者や社会からの信頼回復を図ることが不可欠です。

刑事事件の示談交渉で注意すべきポイント

民事事件との違い

民事事件における示談交渉は、「損害賠償の額や支払い方法」などに焦点が当たることが多く、法的には当事者間での自由な交渉が可能です。一方、刑事事件の場合は「被害者との示談がどのように刑事手続に影響するか」を踏まえて、交渉方針を決定しなくてはなりません。また、刑事事件では捜査機関(警察・検察)が関与しており、被害者が示談金を受け取ったとしても捜査機関による捜査や起訴が完全に免れるわけではない点に留意する必要があります。

企業としてのリスクマネジメント

企業が刑事責任を問われる場合、示談金の支払いだけでなく、組織としての信用失墜や社会的制裁、取引先からの信頼喪失など、金銭的負担を超えたダメージが生じます。示談交渉の段階では「できるだけ早期に解決を図りたい」という気持ちが先行しがちですが、安易に高額な示談金を支払ってしまうと、再発防止策が不十分なまま「一時的な解決」をしてしまうリスクもあります。被害者感情の緩和はもちろん必要ですが、同時に組織体制の問題点を洗い出し、経営者としては今後の再発防止策を実行に移すことが不可欠です。

弁護士の選任と早期相談

刑事事件における示談交渉は、専門家である弁護士を通じて進めるのが一般的です。特に、企業が刑事責任を問われたケースでは、多角的なリスク管理が求められるため、企業法務や刑事事件に詳しい弁護士を早期に選任して相談することが重要となります。弁護士を通じて交渉することで、被害者側との直接的な感情的対立を回避できるだけでなく、適切な法的アドバイスを得ながら示談条件を詰めていくことができます。

経営者がとるべき具体的対策

初動対応:事実関係の把握と社内調査

刑事責任を問われるような事件が発生した場合、まずは事実関係を正確に把握することが第一です。内部告発やマスコミ報道によって事件が表面化する場合もあるため、社内での初動調査が遅れるとリスクが拡大する恐れがあります。経営陣が率先して事実関係を把握すると同時に、必要に応じて外部の専門家の協力を得ながら証拠保全や社内ヒアリングを実施し、真相究明に努めましょう。

被害者への誠意ある対応

被害者がいる事件では、まずは誠意をもって謝罪と被害回復を目指す姿勢を示すことが不可欠です。企業として公に声明を発表する場合、当該事件に対する認識と再発防止策について具体的に言及するとともに、被害者の感情に配慮した内容とすることが望ましいでしょう。謝罪の方法やタイミングを誤ると逆効果となる場合があるため、広報担当や弁護士と相談しながら慎重に進める必要があります。

示談交渉の戦略立案

示談交渉を成功裡に進めるためには、企業側としても綿密な戦略が必要です。具体的には以下の点に注意しましょう。

  1. 示談交渉の主体
    先述のとおり、弁護士を通じた交渉が望ましいです。被害者との直接交渉は感情的対立を招きやすく、また法的な手続き上の問題点を見落とす恐れがあるため、リスクが高くなります。
  2. 示談金の設定
    被害の種類や程度、被害者の感情、社会的影響などを総合的に判断して提示金額を検討します。被害者にとって受け入れ可能な範囲を見極めつつ、企業が将来的に持続可能な範囲の資金を確保することも重要です。
  3. 再発防止策と改善計画
    単に金銭を支払うだけでなく、企業としての管理体制やコンプライアンスプログラムの見直しを含めた改善策を提示することで、被害者側や社会からの信頼回復につなげることができます。

4広報戦略とリスクコミュニケーション

企業が刑事事件に関与すると、メディアやSNSを通じて批判や噂が拡散され、企業イメージが大きく損なわれる可能性があります。こうした状況では、広報戦略やリスクコミュニケーションが極めて重要になります。示談交渉中は、被害者側の感情にも配慮しながら、企業としてどのようなコメントを発するか慎重に検討しなければなりません。下手に言い訳や事実誤認の発言を行えば、被害者や世間からのさらなる反発を招くリスクがあります。

  • 謝罪と説明のバランス: 必要な謝罪の姿勢は明確に示しつつ、事実関係の調査中であることや、守秘義務との兼ね合いで詳細を開示できない部分がある場合は正直に伝えます。
  • 一貫したメッセージ: 経営トップから広報担当まで、対外的なメッセージに一貫性を持たせることが大切です。社内外の混乱を避けるためにも、情報共有や教育が必要です。

示談成立後に求められるフォローアップ

刑事手続の進行

示談が成立したからといって、直ちに捜査終結や不起訴になるわけではありません。しかし、被害者との示談や嘆願書の提出によって、起訴猶予や執行猶予が認められる可能性が高まります。示談成立後も捜査機関や裁判所から追加資料の提出や事情聴取を求められる場合がありますので、その対応は継続して慎重に行う必要があります。

被害者との関係維持

示談が成立した後も、被害者との関係が完全に解消されるわけではないケースもあります。特に企業が継続的な取引関係にある場合や、地域社会での共存関係がある場合などは、示談後もコミュニケーションやフォローを続け、相手方の不安や疑問に丁寧に対応することが望ましいです。示談が成立してからも、企業の改善への取り組みを適宜発信し、被害者や社会全体に対して信頼回復を図る努力を続けることが重要です。

社内体制の再構築

示談成立後、企業が本来なすべきことは「再発防止」です。コンプライアンスプログラムの見直しや内部統制システムの強化、人事評価制度の変更など、抜本的な対策を実施していく必要があります。具体的には以下のような手段が考えられます。

  • コンプライアンス研修の徹底: 全従業員や役員に対して定期的なコンプライアンス研修を実施し、法令遵守の意識を高める。
  • 内部監査機能の強化: 内部統制を強化し、違法行為や不正が早期に発見できる体制を整える。
  • 内部通報制度(ホットライン)の整備: 従業員が不正や疑わしい行為に気付いた際、匿名で通報できる窓口を設置し、適切に対応する。
  • 社内規程やマニュアルの改訂: 不備が発覚した規程やマニュアルを見直し、法令や業界ルールに即した最新の内容にアップデートする。

経営者が主導してこれらを行うことで、社内外に「問題を真摯に受け止めて再発防止に取り組む」姿勢をアピールし、企業への信頼を回復していくことが重要です。

経営者が知っておくべきリスク管理のポイント

日頃からのコンプライアンス意識

刑事責任を問われる企業不祥事は、往々にして「日頃のコンプライアンス意識の欠如」が引き金となります。経営トップが自ら率先してコンプライアンスに取り組む姿勢を見せることで、従業員や取引先にも影響が及び、組織全体のルール遵守意識を高めることができます。逆に経営陣が形だけのコンプライアンス対策をしている場合、現場の意識は高まらず、不正や違法行為が蔓延しやすい土壌を作ってしまう危険があります。

リスクの早期発見と迅速な対処

法律違反や不正が発生する兆候は、社内に必ず何らかの形で現れます。売上データの不自然な動きや、従業員の残業時間の異常な増加、取引先からのクレームなど、小さなサインを見逃さず早期に対処することで、大きな不祥事への発展を防ぐことができます。迅速な対処が結果的に被害拡大を防ぎ、ひいては刑事責任の追及を回避することにもつながるでしょう。

社内コミュニケーションと組織風土

不祥事の温床となるのは、トップダウンの厳しい命令系統や、批判や苦言が許されない風土です。企業として業績を追求することは当然ですが、その過程で従業員が法令や倫理を無視してまでノルマを達成しようとしていないか、また管理職がそれを黙認していないかを常にチェックする仕組みが必要です。社内コミュニケーションを活発化し、問題を早期に共有・解決できる組織文化を育むことは、経営者の責務と言えます。

外部専門家の活用

法改正は頻繁に行われるため、常に最新の法令に対応した体制を維持するのは容易ではありません。企業規模が大きくなるほど複雑な法律問題が発生しやすいため、弁護士や公認会計士、社会保険労務士などの専門家と連携し、定期的に監査やアドバイスを受けることが重要です。また、万一刑事事件が起きた場合は、一刻も早く刑事事件に強い弁護士に相談し、示談交渉や広報対応などを総合的にサポートしてもらう体制を整えましょう。

まとめ

企業が刑事責任を問われるケースは、決して他人事ではありません。コンプライアンスを徹底していても、従業員や取引先など、さまざまなステークホルダーとの関係で予期せぬトラブルが発生する可能性があります。そして、いざ刑事事件として立件される事態になれば、企業イメージや経営の安定に多大な影響を及ぼすだけでなく、経営者自身も大きな精神的・社会的負担を負うことになります。

刑事事件における示談交渉は、被害者との関係修復を図るだけでなく、検察や裁判所に対しても「企業として誠実に対応している」姿勢を示す重要な機会です。示談が成立することで不起訴や執行猶予の可能性が高まり、最終的な刑事処分を軽減できる場合もあります。しかし、その過程においては被害者の感情を丁寧に汲み取りつつ、企業としては再発防止策を打ち出し、社会からの信頼回復に努めることが求められます。

経営者が示談交渉に臨むにあたっては、以下の点を押さえておくとよいでしょう。

  1. 事実関係の正確な把握と証拠保全
    初動対応を誤ると示談交渉の土台が揺らぎ、後の刑事手続にも不利に働く可能性が高まります。
  2. 弁護士の早期選任と法的アドバイスの活用
    刑事事件や示談交渉の経験がある弁護士を選任し、適切な戦略や被害者対応を行うことが重要です。
  3. 誠意ある謝罪と被害回復の提示
    単に示談金の支払いだけに注力せず、被害者や社会の納得を得られる再発防止策や説明責任を果たすことが不可欠です。
  4. 広報戦略と社内体制の強化
    メディア対応や社内外への説明を慎重に行い、組織としてのコンプライアンス体制を見直すことで信頼回復を図る必要があります。

刑事事件は企業にとって大きな痛手であり、一歩間違えれば会社の存続を揺るがす事態に発展しかねません。しかし、適切な初動対応と示談交渉、そして再発防止策を含む抜本的な改革によって、被害者からの理解や社会的信頼の回復につなげることも可能です。経営者としては、平時からコンプライアンスとリスク管理を徹底し、万一の事態に備えた体制を整えておくことが、企業を守り、持続的成長を実現するための大前提となるでしょう。

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