目次
はじめに
特殊詐欺は、振り込め詐欺やオレオレ詐欺、還付金詐欺など、被害者に対して巧妙な手口でお金を騙し取る犯罪行為です。実際に特殊詐欺に関わってしまい、逮捕されてしまうと、被疑者・被告人として極めて厳しい立場に置かれることになります。詐欺は法定刑も重く、初犯であっても実刑となる可能性がある犯罪類型であり、社会的信用を失うリスクも大きいです。一方で、刑事事件においては、被害者との示談が量刑に大きく影響を及ぼすケースが多々あります。もし特殊詐欺で逮捕されたとしても、早期に被害者との示談を成立させることで、不起訴や執行猶予を獲得できる可能性が高まります。
とはいえ、特殊詐欺の被害者は高齢者などが多く、詐欺にあったショックや不安が大きいため、示談交渉が難航しやすい傾向にあります。交渉の進め方を誤ると、結果的に厳しい処分を招いてしまうおそれもあるでしょう。そこで重要となるのが、示談交渉に強い弁護士のサポートです。本コラムでは、特殊詐欺で逮捕された場合における示談交渉と弁護士の役割について詳しく解説し、依頼者(加害者)にとって最適な解決策を得るためのポイントを紹介します。
特殊詐欺とは何か
1-1.特殊詐欺の概要
特殊詐欺とは、電話やメール、SNSなどの通信手段を用いて、巧みに被害者を錯誤に陥れ、現金やキャッシュカード情報などを詐取する詐欺の総称です。典型的なものとしては「オレオレ詐欺」「振り込め詐欺」「架空請求詐欺」「還付金詐欺」などが挙げられます。被害者の大半は高齢者であり、家族を装ったり、役所職員や銀行員などになりすまして金銭を騙し取る例が後を絶ちません。
特殊詐欺は、大規模な組織で行われることも多く、グループの末端で電話をかける役割や、いわゆる「受け子」や「出し子」と呼ばれる現金を受け取る役割を担っていたというケースもあります。直接騙す行為に携わっていなくても、資金運搬や口座の開設協力といったかたちで犯行に関与していた場合にも詐欺罪に問われる可能性があります。
1-2.法定刑の重さ
詐欺罪の法定刑は「10年以下の懲役」とされており、執行猶予が付くか実刑になるかは、被害額・犯行態様・示談の有無などの事情が総合的に考慮されます。高齢者を狙う悪質性や組織性が認められると、量刑はより重くなることが多いです。実刑のリスクも軽視できないため、示談交渉や弁護活動を丁寧に行う必要があります。
特殊詐欺で逮捕されたらどうなる?
2-1.逮捕直後の流れ
特殊詐欺で逮捕されると、警察署で取り調べを受けることになります。逮捕後は、通常48時間以内に検察官に送致され、その後24時間以内に勾留(最大20日間)するかどうかが判断されます。
この間、本人は家族や外部との自由な連絡が制限され、精神的にも肉体的にも厳しい状態に置かれることが多いでしょう。取り調べでの供述調書は、後の起訴・不起訴や刑の重さに大きく影響します。不利な供述をしてしまったり、誤解を招く説明をしてしまうと、取り返しのつかない結果を招きかねません。そのため、できるだけ早期に弁護士を選任し、取り調べに備えたアドバイスを受けることが重要です。
2-2.勾留と起訴・不起訴
検察官が勾留を請求し、裁判所が認めれば、最大20日間の勾留が続く可能性があります。勾留された状態で取り調べが進み、最終的に起訴か不起訴かが判断されます。特殊詐欺は悪質性が高いため、起訴される割合が高い傾向にあります。しかし、示談が成立し、被害者の処罰感情が和らぐことで、不起訴や略式起訴(罰金処分)にとどまる可能性が出てくるケースもゼロではありません。
また、起訴されたとしても、示談が成功している場合は執行猶予判決の獲得や減刑につながりやすくなります。したがって、逮捕・勾留中からいかに速やかに示談交渉に着手できるかが大きなカギとなります。
3.示談交渉が重要となる理由
3-1.示談の成立が量刑に与える影響
刑事事件全般にいえることですが、被害者との示談成立は量刑に大きく影響します。とくに詐欺事件の場合、被害額の返金や精神的苦痛に対する慰謝料の支払いを通じて被害者の損害を回復し、処罰感情を和らげることができれば、検察官や裁判官の判断において被告人に有利に働く可能性が高まります。
示談が成立していると、検察官が不起訴とする事由のひとつとして考慮されることがあり、裁判になった場合も、執行猶予付きの判決や減刑を引き出せることが期待されます。特殊詐欺であっても被害者感情が大きく和らぎ、本人の反省の姿勢が明確であれば、実刑を回避する余地は生まれ得るのです。
3-2.被害者の処罰感情を和らげる意義
特殊詐欺の被害者は、高齢者をはじめ、「騙されてしまった」という強いショックと、加害者への怒りの感情を抱きやすい傾向にあります。しかも、詐欺に遭ったことを周囲に知られるのを恐れ、被害を公にしたくないという心理を持つ方も少なくありません。
そのため、被害者本人との連絡がスムーズにつかない場合や、連絡先すら把握できないケースも多々あります。しかし、だからこそ専門知識や交渉術を駆使できる弁護士の出番です。適切なアプローチで被害者の理解を得ることで、示談に向けた話し合いの糸口をつかむことが可能です。
4.示談交渉の進め方
4-1.被害者とのコンタクトと謝罪
特殊詐欺の場合、被害者に直接連絡を取ろうとしても、警戒心が高く、応じてもらえないことが多いです。また、逮捕・勾留中であれば本人が自由に外部と連絡を取ること自体が難しい状況にあります。そこで、弁護士が示談交渉の窓口として動くことが大変有効です。
被害者に対しては、まず誠意をもって謝罪の意を伝え、金銭的な補償(弁償額)を提示することが必要です。被害額の全額弁償を目指すことはもちろん、加えて慰謝料なども考慮し、納得してもらえる金額を提示することが示談交渉を進めるうえでの出発点となります。
4-2.被害者の要望を的確に把握する
示談交渉を円滑に進めるには、被害者の要望を正確に把握することが不可欠です。被害者が最も求めているのは、経済的な損害の回復である場合が多いものの、「加害者が十分に反省しているか」「今後二度と同じような被害を出さないよう誓約しているか」といった感情面の問題も大きいです。
さらに、高齢の被害者の場合、加害者側の出方によっては「もう顔も見たくない」という強い拒否感を示すこともあります。そのようなときこそ、被害者の感情を傷つけず、納得を得られるだけの配慮した言動が欠かせません。専門的なノウハウをもった弁護士が調整役となることで、示談成立の可能性を高められるのです。
4-3.示談書の作成
交渉の末、示談金額や支払い方法について合意が得られたら、示談書を作成します。示談書には、被害者と加害者双方の合意内容を正確に盛り込み、特に「被害者が示談を受けて、加害者の処罰を望まない意思を示す」ことが明文化されることが重要です。
示談書の内容によっては、不起訴や減刑を強く後押しする材料になる場合があります。示談書のひな型はネット上にも出回っていますが、刑事事件の性質や事実関係を踏まえたうえで、法的に有効かつ不備のない示談書を作るためには、やはり弁護士のサポートが必要不可欠といえるでしょう。
5.弁護士の役割とメリット
5-1.迅速かつ適切な示談交渉
逮捕・勾留中であっても、弁護士は接見(面会)が保障されており、依頼者(被疑者・被告人)の状況や希望を詳しく聞き取ることができます。そして、被害者との直接交渉を代行し、スムーズな示談交渉を進められるというのが弁護士の大きな強みです。
特に特殊詐欺の被害者は「自分を騙した人物と話をしたくない」「もう関わりたくない」という思いを抱いていることが少なくありません。しかし、弁護士が間に入ることで、冷静かつ客観的な状況説明や謝罪の意思表示が可能となり、示談交渉の入り口が拓けます。
5-2.取調べ対応のアドバイス
示談交渉と同時進行で大切なのが、取り調べへの対応です。特殊詐欺においては、組織の全容解明や共犯者の割り出しなどで警察が厳しく追及してきます。捜査機関は供述の食い違いを指摘したり、威圧的な態度をとることもあります。
こうした局面で、弁護士は取調べの注意点を具体的にアドバイスします。供述の内容や証拠の有無を踏まえて、どのように事実を認めるべきか・反省の気持ちをどう表すかなど、一貫した方針のもとで対応できるよう、弁護士が導いてくれるのです。結果的に、不用意な発言で不利な状況を招くリスクを減らせます。
5-3.不当な勾留からの解放や保釈手続きのサポート
逮捕・勾留の段階で、弁護士は勾留理由開示や準抗告などを通じて、必要性のない勾留を争うことができます。また、起訴後であれば保釈制度を利用して、在宅で公判に備える道を探ることも可能です。
保釈が認められれば、外部で自由に活動できるため、示談交渉にもより専念できるほか、職場復帰や家族のケアもスムーズになります。弁護士がこうした手続きを的確に進めることで、依頼者が少しでも早く通常の生活に戻れるようサポートしていきます。
5-4.裁判での弁護活動
示談が成立せず起訴になった場合でも、弁護士は公判での弁護活動を通じて、量刑を軽くするための主張立証を行います。被害額や被告人の役割、反省の状況などを丁寧に法廷で説明し、裁判官に執行猶予や減軽を求めていくのです。
特に、示談交渉が継続中である場合や、ある程度の弁済がすでに行われている場合は、それらを公判において積極的に主張し、有利な情状として評価してもらうよう弁論を組み立てます。特殊詐欺事件の場合でも、最終的な量刑は被告人に有利な事情をどれだけ具体的に示せるかによって大きく左右されるのです。
6.当事務所の強み
6-1.刑事事件に精通した弁護士チーム
当事務所は刑事事件、とりわけ示談交渉が重要となる詐欺事件の対応実績が豊富です。特殊詐欺は被害者との関係性が複雑化しやすく、通常の詐欺事件よりも高い専門性とノウハウが求められます。私たちは、これまで多くの特殊詐欺事件で示談交渉を成功に導き、不起訴や執行猶予判決を勝ち取ってきました。
まずは依頼者の方との丁寧なヒアリングを通じて、事件の背景や経緯、本人がどのように犯行に至ったかなどを詳細に把握します。そのうえで、捜査機関とのやりとりや、被害者へのアプローチ方法を検討し、最適な解決策を目指します。
6-2.迅速な対応と柔軟な体制
特殊詐欺事件では、逮捕後の初動が極めて重要です。勾留が長引けば、示談交渉の余地が狭まり、仕事や家族への負担も増していきます。当事務所では、弁護士がスピーディーに接見を行い、依頼者の状況を正確に把握するだけでなく、被害者との連絡ルートを早期に調整するよう全力で動きます。
また、複数弁護士が連携しながら案件に取り組む体制を整えており、土日祝日でもご相談・緊急対応が可能です。どのような時間帯や状況であっても、弁護士が力を尽くして依頼者をフォローいたします。
6-3.依頼者に寄り添う姿勢
特殊詐欺の加害者側に対する社会的な非難の目は厳しいものがあります。しかし、だからこそ私たちは、依頼者の方が抱える不安・恐怖・後悔などの感情に寄り添い、最適な解決を図るために尽力します。
事件当事者は孤立しがちで、「これからどうなるのか」「どれほどの刑が科されるのか」と不安を抱えて夜も眠れない方が多いです。当事務所の弁護士は、法律知識を提供するだけでなく、精神的なサポートも重視し、依頼者が少しでも安心できるよう全力でサポートいたします。
7.弁護士に相談するタイミングと流れ
7-1.逮捕直後に相談する
特殊詐欺で逮捕された場合は、できるだけ早く弁護士に相談することが大切です。逮捕されてすぐに弁護士を呼ぶ「当番弁護士制度」も活用できますし、自分や家族が信頼できる弁護士に連絡を取り、速やかに面会・接見を依頼しましょう。
逮捕後の取り調べでどのように供述するか、また示談交渉をどのタイミングで始めるかによって、事件の結果は大きく変わります。刑事事件に注力している弁護士であれば、最善のアドバイスを得ながら適切な対応が可能です。
7-2.在宅捜査の段階からの対応
特殊詐欺の事案でも、逮捕されずに在宅捜査が行われるケースがあります。この場合も、捜査が進めば起訴されるリスクがあるため、決して油断はできません。在宅捜査の段階であっても、被害者との示談交渉や検察官とのやりとりは重要となります。
弁護士のサポートを受けることで、被害者への謝罪・賠償を早期に行い、不起訴処分を得られる可能性を高めることができます。仮に起訴されてしまっても、有利な情状を積み重ねることで処分を軽減する道が開けるのです。
7-3.相談・依頼の流れ
- 初回相談(面談・電話など)
事件の概要をお伺いし、どのような弁護活動が必要かを判断します。 - 正式な依頼契約
弁護士費用や活動方針を説明し、納得いただければ正式に委任状を取り交わします。 - 捜査機関との連携・示談交渉開始
接見や捜査資料の確認、被害者とのやりとりを通じて示談を進めます。 - ※事件の解決
不起訴など、最善の結果を目指し、事件が終了します。 - (起訴された場合)公判対応
裁判での弁護活動を行い、執行猶予や減刑をめざします。 - ※事件の解決 執行猶予・減刑を目指し、事件が終了します。
8.まとめ:早めの弁護士相談が解決への近道
特殊詐欺で逮捕された場合、起訴されてしまうと実刑判決の可能性も大いにあり、人生に大きな影響を与えます。とはいえ、被害者との示談成立が得られれば、不起訴や執行猶予など、処分を軽減できるチャンスも生まれます。そのためには、早期に弁護士に相談し、正しい示談交渉の進め方を実践することが不可欠です。
当事務所では、刑事事件の示談交渉に豊富な実績とノウハウを有する弁護士が、依頼者の立場に立って全力でサポートいたします。取り調べへの対応や被害者との関係修復、裁判での弁護活動など、あらゆる面でサポートを行い、依頼者の不安や負担を少しでも軽減できるよう努めています。
もし、特殊詐欺の容疑で逮捕・勾留されている、あるいは在宅捜査を受けているという方は、ぜひ一度弁護士へ相談してみてください。初期段階から適切な対策を講じることで、将来の進路や人生を左右する重要な局面を、より有利に乗り切ることができるでしょう。相談することで得られる安心感と、事件解決へ向けた具体的なロードマップが、必ずや今後の大きな支えとなるはずです。
刑事事件は時間との戦いでもあります。一日でも早く弁護士と連絡を取り、可能な限り早期に示談交渉を進めることが、特殊詐欺における最善の結果につながるカギです。どうぞ遠慮なく当事務所へご連絡ください。私たちはあなたの力になれるよう、全力で取り組むことをお約束します。