不同意性交等罪と示談交渉
目次
不同意性交等罪で立件されてしまったら──まずは冷静に弁護士に相談を
近年、性犯罪に対する社会的な目は一段と厳しさを増しています。2017年の刑法改正によって「強制性交等罪」が新設され、2023年7月施行の改正刑法により「不同意性交等罪」という新たな名称へと変更・整理されました。以前から議論されてきた性犯罪に対する厳罰化が法律上も色濃く反映され、警察や検察も積極的に捜査を進めるようになっています。
その結果、少し前であれば不十分な証拠として立件が見送られていた可能性のある事案でも、逮捕・勾留、起訴という流れに発展するケースが増加傾向にあります。このような流れの中で「不同意性交等罪」で捜査対象となってしまった場合、早期に弁護士を立てて、示談交渉や刑事弁護の戦略を冷静に検討することが不可欠です。
「不同意性交等罪」とは
1-1.改正前の「強制性交等罪」
もともと「強制性交等罪」は2017年の刑法改正で新設されました。それまでは「強姦罪」という名称でしたが、対象となる行為や被害者の性別など、社会情勢の変化や実態に沿って見直しが行われた結果、「強制性交等罪」に統合されました。具体的には、暴行や脅迫を用いて相手方の意思に反して性交等を行うことを犯罪化する規定です。
1-2.2023年改正刑法での「不同意性交等罪」
2023年の刑法改正では、さらに「不同意性交等罪」という名称に整理されました。加害者の暴行・脅迫のみならず、被害者の心神喪失や抗拒不能状態、または同意を得られない状況を利用した性交等も、広く処罰の対象としています。
改正後は、同意が得られていない状況そのものを重点的に取り扱う色合いが強く、「合意がなかった」とされれば犯罪が成立する可能性が高まっています。捜査機関は被害者の訴えを受けると、合意の有無を厳しく捜査しますが、当事者間の認識の違いによってトラブルが発生してしまうケースは少なくありません。
捜査段階から逮捕、起訴されるまでの流れ
被疑者として捜査対象になった場合
警察が「不同意性交等罪」の容疑で捜査を開始すると、まずは任意での事情聴取が行われる可能性があります。その際は、事前に弁護士に相談し、どのように話すか方針を決めておくことが重要です。
もし警察からの連絡があったり、自宅へ警察官が訪れたりした場合、「自分は何も悪くないから大丈夫だ」と考えて軽く受け答えしてしまうと、思わぬ形で不利な供述調書が作成されるおそれがあります。一度、負担の大きい証拠として残ってしまった供述調書は、後から訂正することが困難です。少しでもご不安な点があれば、速やかに弁護士へ相談してください。
逮捕・勾留
警察が被疑者の逃亡や証拠隠滅の可能性があると判断した場合は、逮捕に踏み切る可能性があります。逮捕後は最長72時間以内に検察庁へ送致され、検察官が勾留請求するかどうか判断する流れです。
勾留が認められると、その後最長20日間は身柄を拘束されるおそれがあります。会社員や自営業など社会的な活動を行っている方にとっては、長期の身柄拘束は職場や家庭への影響も非常に大きく、できるだけ回避したいものです。逮捕の可能性が少しでも感じられるときは、早期に弁護士に相談して、不当な逮捕や勾留に対する適切な対策を取る必要があります。
起訴されるとどうなるか
勾留期間の間に警察や検察による取り調べが行われ、検察が「起訴すべき」と判断すれば、公判が開かれることになります。起訴されると高い確率で有罪となり、量刑が争点となります。
性犯罪は裁判所から非常に重く見られる傾向があるため、有罪判決となった場合は実刑や長期の懲役刑が科されるリスクが大いにあります。そうならないためにも、捜査段階から被疑者の立場でどのような弁護活動を行えるかが極めて重要です。
不同意性交等罪が成立しやすい状況
2023年の改正刑法では、「同意がない性行為」に強く焦点が当てられています。とくに注意したいのは、暴行や脅迫が明確にあったわけではないケースでも、被害者が「同意していなかった」と主張すれば、捜査・立件の可能性がある点です。具体的には、以下のような状況においては特にリスクが高まるでしょう。
- 酒席で相手が泥酔していた場合
泥酔状態の相手と性交渉を持った際、相手が事後になって「同意の意思表示ができる状態ではなかった」と訴えた場合です。 - 相手が精神的に強いストレスや恐怖心を抱いていた場合
大声で脅したわけではなくても、相手が強い威圧感を感じて「拒否できなかった」と証言した場合、同意が成立していないとみなされる可能性があります。 - 明示的な合意の確認をしていない場合
言葉での確認をしておらず、行為後に「合意がなかった」という主張をされた場合、加害側の意向が優位に働いたと見なされやすくなります。
こうした状況は、被害者の証言が大きなウェイトを占めるため、真実はどうであれ、捜査機関や裁判所が「不同意」と認定するかどうかによって結論が大きく変わります。
不同意性交等罪で示談を成立させるメリット
不同意性交等罪で捜査を受けている被疑者にとって、示談を成立させることは非常に重要です。示談とは、被害者との間で金銭を含む合意を取り付け、被害者が被疑者を許す意思を表明することをいいます。示談により刑事手続で有利に働く可能性が高まるのは、次のようなメリットがあるからです。
- 不起訴処分の獲得
被害者との示談が成立し、被害者が告訴を取り下げたり、処罰を求めない意思を明確にしたりすると、検察官が「起訴猶予(不起訴)」の判断を下す可能性が高まります。実際、示談の成立によって被害感情が和らぐと、検察官としても起訴しない判断をする材料になります。起訴を回避できれば、前科がつかないなどの大きなメリットがあります。 - 刑の減軽につながる
もし起訴されて裁判になった場合でも、被害者の処罰感情が和らいでいる旨を示す示談書は、量刑判断において重要な要素になります。性犯罪においては被害者の処罰感情が強いと重い刑が科される傾向がありますが、示談が成立している場合は反省や和解の姿勢を示す材料として考慮されるため、刑が軽くなる可能性を高めます。 - 被害者との関係を早期に解消
事件化すると、捜査や裁判を通じて長期間にわたり被害者との関係が続き、精神的な負担が大きくなります。示談によって早期に和解・解決を図ることができれば、その後のトラブルが拡大する可能性を抑えられます。
5.示談交渉で気をつけたいポイント
示談交渉を進めるにあたっては、以下の点に注意が必要です。
- 第三者(弁護士)を交えた交渉
被疑者本人やその家族が直接、被害者とやり取りをすると、感情的になって交渉がこじれたり、場合によっては脅迫などと誤解されるリスクがあります。必ず弁護士を介して冷静に、適切な条件で話を進めましょう。 - 誠意を示す
性犯罪においては被害感情が強くなりがちです。言い訳に終始するのではなく、誠意を持って謝罪の意思を伝えつつ、示談金の提案など具体的な解決策を示すことが大切です。 - 示談金の相場や支払い能力
示談金の額はケースバイケースですが、被疑者の経済状況や行為態様、被害内容など総合的に考慮して提示されます。相場を把握しつつも支払える範囲で提示しないと、結局合意できずに示談が不成立になってしまうことがあります。弁護士は過去の経験や事例を踏まえてアドバイスしますので、相談の上で進めるのが望ましいでしょう。 - 書面化と告訴・告発取下げの確認
示談が成立した場合は、合意内容を示談書という形で書面に残し、署名捺印をもらう必要があります。さらに、被害届や告訴の取下げをしてもらうことができるかどうか、確実に確認しておきましょう。
弁護士を早期に依頼する重要性
不同意性交等罪は被害者の証言や状況証拠が大きくものをいう犯罪類型です。そのため、次のような観点からも早期の弁護士依頼が不可欠です。
- 警察・検察とのやり取りのサポート
取り調べで不利な供述をしてしまうと、後々まで修正が難しくなります。弁護士に相談することで、黙秘権の行使や事実経緯の説明の仕方など、適切な対応をアドバイスしてもらえます。 - 身柄拘束を回避する対応
逮捕・勾留を回避するには、検察や裁判所に対して定職や住居の安定などを主張して「逃亡や証拠隠滅の恐れが低い」ことを訴える必要があります。また、身柄拘束後も、早期の釈放に向けて弁護士が働きかけることで、勾留請求や勾留決定を阻止・取り消しできる場合があります。 - 示談交渉の代理人としての活動
示談交渉は加害者本人で行うのが難しく、感情的なしこりが残るとトラブルが長引く原因になります。弁護士が代理人として被害者と交渉することで、法的根拠に基づいた冷静な交渉が可能になり、示談成立の可能性が高まります。 - 裁判での弁護活動
もし起訴された場合、裁判で無罪を目指すのか、減刑を目指すのかといった方針を決めて戦略を立てる必要があります。性犯罪の裁判は被害者の証言が重視される一方で、客観的証拠や弁護側の主張により無罪や執行猶予を勝ち取れるケースも存在します。専門知識と経験豊富な弁護士が対応すれば、最善の結果を追求できます。
当事務所の強み:刑事事件の示談交渉に精通
当事務所は刑事事件、とりわけ不同意性交等罪や準強制わいせつ、痴漢などの性犯罪案件を数多く取り扱ってきました。そのため、示談交渉におけるノウハウが蓄積されており、事件の早期解決や不起訴処分の獲得、量刑の軽減など、多数の実績を有しております。
- 豊富な示談交渉実績
被害者側の代理人弁護士との交渉にも慣れており、適切な姿勢での謝罪や示談金の提案を通じて合意に至るための交渉を尽力いたします。 - スピード重視の対応
刑事事件は時間との勝負です。逮捕のリスク、会社や家族への影響などを考えると、一日も早い対応が大きく結果に関わってきます。当事務所では、緊急のご相談にも可能な限り迅速に対応しております。 - 綿密な事前準備
示談交渉や捜査対応では、どのような経緯があったのか、被疑者がどのような状況下にあったのか、あるいは相手がどのような主張をしてくるのかといった点を細かく把握し、綿密に戦略を立てることが重要です。当事務所では、依頼者との面談を丁寧に行い、可能な限り詳細な事実関係の整理をしてから交渉に臨みます。 - 守秘義務を徹底しプライバシーに配慮
性犯罪は他の刑事事件以上にプライバシーや名誉が関わるデリケートな問題です。当事務所の弁護士・スタッフには守秘義務があり、相談内容が外部に漏れることはありません。周囲に知られたくない情報を徹底的に保護しながら、安心してご相談いただける環境を整えております。
まとめ:早めの行動が「人生」を守る
不同意性交等罪で取り調べを受けたり、逮捕のリスクがある場合、何より大切なのは早期の弁護士相談です。性犯罪は世間の注目が高いため、ひとたび立件されると社会的制裁も非常に厳しくなります。職場やご家庭への影響を最小限にとどめるためにも、少しでも不安を感じたら、まずは専門の弁護士にご相談ください。
当事務所は、刑事事件の示談交渉や弁護活動に強みを持ち、豊富な経験と実績を重ねております。ご本人やご家族だけで悩んでいても、適切な解決策はなかなか見つからないものです。私たちは、依頼者の権利と生活を守るために、全力でサポートいたします。
「まさか自分が…」と思うような事態に陥ってしまっても、黙って放置していては状況は好転しません。早い段階で弁護士に相談することで、無用な逮捕・勾留を回避できる可能性も高まり、また、被害者との示談交渉もスムーズに進む場合があります。
当事務所では、電話やメールでのご相談も受け付けています。「不安だけれど、どこに相談していいかわからない」、「逮捕されるかもしれない」という方は、どうぞ一人で抱え込まず、ぜひ一度ご連絡ください。私たちと一緒に、解決に向けた最善の方法を見つけていきましょう。
刑事事件は、その対応の如何によって、あなたの今後の人生を大きく左右する重大事です。特に不同意性交等罪は社会的制裁や実刑リスクも高い分野ですから、早期解決のカギは弁護士による迅速で適切な弁護活動にかかっています。まずはお気軽にご連絡いただき、少しでも早く不安を解消してください。
当事務所は依頼者の立場に立ち、丁寧かつ迅速に対応いたします。示談交渉・刑事弁護の実績豊富な弁護士が皆様をサポートいたしますので、どうぞ安心してお問い合わせください。
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