【弁護士の視点】サッカー日本代表・佐野海舟選手の不同意性交罪での逮捕 |福岡で弁護士が刑事事件(示談交渉)をスピード解

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【弁護士の視点】サッカー日本代表・佐野海舟選手の不同意性交罪での逮捕

はじめに

報道によると、サッカーの日本代表としてアジアカップにも出場した佐野海舟選手と、知人男性2人が東京都内のホテルで30代女性に性的暴行をしたとして、7月14日の夜に不同意性交容疑で警視庁に逮捕されていたことが7月17日に明らかになったようです。

佐野選手は日本サッカー界に大きな貢献をされていて、今後もドイツ1部リーグ・マインツへの移籍が決まったばかりの前途洋洋の選手ですから、これまで応援してきたファンの方々にとって、心配どころではない騒ぎだと思います。

現時点で報道されている情報の断片から弁護士の視点で、解説していきたいと思います。

不同意性交等罪とは?

今回、佐野選手の容疑となっている「不同意性交等罪」の言葉に今一つピンとこない方も多いと思います。従前、強姦罪、強制性交等罪とされていた犯罪の類型が、昨今の法改正により、必ずしも暴行・脅迫を伴わなくても、同意の上ではないであろうという類型化された場面で適用される犯罪類型です。2023年7月13日以降に行われた事件に適用されています。

実際の刑法の条文を見てみましょう。

(不同意性交等)
第百七十七条 前条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛こう門性交、口腔くう性交又は膣若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下この条及び第百七十九条第二項において「性交等」という。)をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、五年以上の有期拘禁刑に処する。
2 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、性交等をした者も、前項と同様とする。
3 十六歳未満の者に対し、性交等をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。

なお、ここで、前条第一項各号とは以下をいいます。

一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕がくさせること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。

ここで、注意頂きたいのは、不同意性交等罪の法定刑は5年以上の有期拘禁(懲役または禁錮)という点です。執行猶予が付くには言い渡される刑が3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金であることが必要です。つまり、不同意性交等罪で起訴されてしまい、このまま裁判所に事実関係が認められてしまった場合、特別な事情がない限り、実刑が確定しまうという状況であることは確かです。佐野選手は23歳という若さですが、仮に最低の5年間としても、有期懲役になれば選手生命は相当に危機的な状況になります。

弁護活動について

同じような状況で、当事務所の弁護士が弁護人として依頼を受けた場合に、どのように弁護活動を進めるか、想像してみました。以下は、不同意性交罪の弁護活動一般論ですので、佐野選手について「被疑者」という表現を用いています。

1 留置施設に急行

まずは、留置施設に急行し、被疑者本人に被疑事実が真実か否かを確認します。

2-1 (真実でない場合)

取り調べで作成する供述調書の重要性について強調し、黙秘権と調書への署名のリスクを強く説明します。特に、供述調書の作成の最後に読み聞かせを受けたときに、真実と異なる部分については訂正を申し立てる必要性を強く説明します。また、日弁連が作成している「被疑者ノート」を差し入れ、日々の捜査活動の状況について詳細に記録するように助言します。冤罪であるとすれば疑いを晴らす方法を協議します。

2-2(真実の場合) 

本件のような場合は、被害者との示談を成立させること以外に被疑者が窮地を脱する決定打はないと思われます。速やかに、捜査機関経由で被害者の連絡先情報を入手し、被害者と交渉を試みます。

【示談交渉について】
仮に、容疑について被疑者自身が認めている場合、示談交渉活動が重要となります。
今回の件の場合、被疑者が佐野選手という有名人であり、被疑者に資力があることは公知の事実とも言えます。そのため、仮に被害者の方が示談に応じる場合でも、示談金は一般的な相場よりも高額になる可能性は高いと思われます。また、共犯者がいる事件ですので、佐野選手の示談が成立してもすぐに捜査手続きが終了するとは限りません。
それでも、薬物犯などの被害者が存在しない犯罪とは異なり、被害者が存在する不同意性交のような事件では、被害者の方との示談成立が特効薬となり得、早期の釈放と不起訴処分を得られることも期待できます。すでに、実名報道により、佐野選手の立場は苦しくなっていることは確かですが、今後の選手生命を考えれば、やはり不起訴の獲得は金銭には代えられない重要な意味を持ちます。
一方、本件は身柄事件ですので、逮捕後23日以内には検察が起訴するか否かの判断をします。この期間が、示談交渉の一つのタイムリミットとも言えます。もちろん、起訴された後でも示談自体は可能ですが、有罪が前提となりますので、やはり、弁護人にとっては、検察が起訴を決定する前に示談を成立させるよう活動することが非常に重要となります。

 

※上記は、あくまでも現在(2024年7月18日)報道されている限られた断片的な情報をもとに一般論を記載したものです。実際に活動をされている弁護人は様々な事情や情報から依頼者の立場を総合的に考えて行動されていると想像されますので、実際に行われている弁護活動について批判や評価をする意図は一切ありません。

※示談交渉になる場合、被害者の方には示談に応じるか否かを決定する自由がありますので、本記事は、これに不当な影響を与える意図は一切ありません。

 

この記事の執筆者:弁護士 原 隆

 

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