マンション等の集合住宅の共用部分への立ち入りは不法侵入? 住居と判断され住居侵入罪で逮捕される場所はどこか解説 |福岡で弁護士が刑事事件(示談交渉)をスピード解

原綜合法律事務所 対応地域/福岡県及び近県(九州及び山口県)
弁護人選任検討の方専用の相談ダイヤル/050-7586-8360/【24時間受付・初回無料(加害者本人と親族のみ)】 メールでのご相談も受付中

マンション等の集合住宅の共用部分への立ち入りは不法侵入? 住居と判断され住居侵入罪で逮捕される場所はどこか解説

マンションやアパートに無断で立ち入ると住居侵入罪で逮捕されることもあります。
共用部分のうち、どの部分に立ち入ると住居への侵入と判断されるのでしょうか? 法律や判例の考え方を解説します。
 

目次

不法侵入になるケースを解説 マンションやアパートなどの共用部分への無断立ち入りは住居侵入罪?

ポスティング等のために、マンションやアパートといった集合住宅の共用部分に立ち入ることは不法侵入になるのでしょうか? また、刑法上の住居侵入罪はどのような場合に成立するのでしょうか?
マンションやアパートなどの共用部分への立ち入りの際に、不法侵入や住居侵入罪に問われないためのポイントについて解説します。
 

マンションの共用部分に勝手に入ると不法侵入?

マンションの共用部分は、居住者以外の人が勝手に入ると不法侵入になるという話を聞いたことがあると思います。
例えば、広告やビラを投函するためにマンションの共用部分である廊下に立ち入って各戸のポストにポスティングしようとする場合、不法侵入に判断されてしまうのでしょうか?
結論から言うと、ポスティング目的でも、マンションの共用部分に勝手に入ると不法侵入になる可能性があります。
 

マンションの共用部分に不法侵入することは刑法上どのような罪になるのか?

不法侵入という言葉はよく耳にすると思いますが、不法侵入罪という名前の犯罪はありません。
刑法では、「住居侵入等」の罪として、130条に規定されています。
 
「住居侵入等」の罪は次のような行為を罰するものです。
 

  • ・正当な理由がないのに、人の住居に侵入する行為(住居侵入罪)
  • ・正当な理由がないのに、人の看守する邸宅、建造物、艦船に侵入する行為(建造物侵入罪)
  • ・要求を受けたにもかかわらず人の住居、人の看守する邸宅、建造物、艦船から退去しない行為(不退去罪)

 
これらの行為を行った場合は、3年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金に処せられます。
 
人の住居とは、人の起臥寝食に使用される場所と解されており、マンションの場合は、専有部分に相当します。
さらに、住居は部屋であることは要しないと解されており、マンションやアパートの階段通路、屋上なども人の住居に含まれると解釈することもできます。
また、人の看守するとは、管理人等がいたり、鍵をかけるなどして他人が事実上支配している状態にあることを意味します。
邸宅とは、住居用であるものの現在使われていない物件のことで、空き家やオフシーズンの別荘などが該当します。
建造物とは、住居用以外の建物一般のことで学校や官公署の庁舎、駅舎などがこれに当たると解されています。
 
なお、判例は、「各号棟の1階出入口から各室玄関前までの部分」、つまり、廊下や階段といった共用部分も、宿舎管理者の管理に係るものであるため、居住用の建物の一部として、「人の看守する邸宅」に当たるとの判断を示しています(最判平成20年4月11日)。
いずれにしても、マンションの共用部分に正当な理由がなく立ち入る場合は、住居侵入罪に該当する可能性があります。
 

マンションの敷地に入ることは不法侵入したことになるのか?

誰でも立ち入りが容易なマンションの入り口付近に、各戸の集合ポストが並んでいるケースもあります。
この場合、階段や廊下等に立ち入らず、ポスティングを行うことができ、マンションの敷地には立ち入っていても、共用部分には立ち入っていないと言う理屈が成り立ちそうです。
では、このようなケースでは、住居侵入罪に該当しないのでしょうか?
 
道路や隣地との境界に門塀等の囲障が設置されており、何号棟という形でいくつかの建物が立ち並ぶ公務員宿舎にポスティング目的で立ち入った事案で、判例は、次のような見解を示しています(最判平成20年4月11日)。
 
敷地のうち建築物が建築されている部分を除く部分は、門塀等の囲障を設置することにより、建物の付属地として建物利用のために供されるものであることを明示されている。
よって、「人の看守する邸宅」の囲にょう地として、邸宅侵入罪の客体になる。
 
つまり、マンションの敷地に門塀等の囲障が設置されている場合、その囲障を超えて、正当な理由がなくマンションの敷地内に立ち入る場合は、住居侵入罪に該当する可能性があります。
 

マンションの共用部分や敷地に立ち入ると、なぜ、住居侵入等罪になるのか?

マンションの共用部分である廊下に立ち入って各戸のポストにポスティングしたとしても、空き巣や闇バイトの強盗の下見等でない限り、居住者に直接の被害が及ぶ可能性は低いと言えます。
では、なぜ、マンションの共用部分に無断で立ち入ると、住居侵入罪になるのでしょうか?
 
これは、住居侵入罪の保護法益は何かという話になりますが、「新住居権説」という考え方があります。
この説では、居住者は、自己の住居への他人の立ち入りを認めるか否かを決める権利を有しているとし、居住者の意思に反する立ち入りが行われた場合が住居侵入に当たると考えます。
つまり、居住者が立ち入りを拒否しているのに無視して入った場合は住居侵入罪になりますが、居住者が立ち入りを拒否していないのであれば、住居侵入罪に当たらないということです。
 

広告やビラのポスティング禁止の張り紙等がない場合はどうすべきか?

広告やビラのポスティングのためにマンションの共用部分に立ち入るケースでは、居住者や管理権者が投函を拒否しているのかどうかわかりにくい場合もあります。
例えば、広告やビラのポスティングを拒否すると張り紙等で警告しているのであれば、これを無視して入った場合は、住居侵入罪に該当しますが、張り紙等がない場合はどうでしょう?
 
この点、判例は次のように述べています。
 
管理権者が予め立入り拒否の意思を積極的に明示していない場合でも、建造物の性質、使用目的、管理状況、管理権者の態度、立入りの目的などからみて、現に行われた立入り行為を管理権者が容認していないと合理的に判断されるときは、住居侵入罪が成立する(最判昭和58年4月8日)。
 
つまり、広告やビラのポスティング禁止の張り紙等がなくても、常識的に考えて、マンションの共用部分に無断で立ち入ることが禁止されているであろうと考えられるケースでは、住居侵入罪が成立することになります。
 

マンションの共用部分にポスティング目的で入って逮捕されることはあるのか?

実際に、ポスティング目的でマンションの共用部分に入った行為が不法侵入に当たるとして、逮捕されたケースはあるのでしょうか?
結論から言うと、ポスティング目的で入った場合でも、不法侵入に当たるとして逮捕されたケースはたくさんあり、最高裁まで争った事例もあります。
代表的な事例を二つ紹介します。
 

防衛庁立川宿舎事件(最判平成20年4月11日)

東京都立川市所在の防衛庁立川宿舎には、敷地内に入る門塀付近に「ビラ貼り・配り等の宣伝活動」を禁止する旨の案内板があったにもかかわらず、反戦を唱える団体が敷地内に立ち入って、建物の廊下や階段にも立ち入り、各戸のポストに反戦を訴えるビラを投函した事例。
公務員宿舎である集合住宅の共用部分及び敷地に、同宿舎の管理権者の意思に反して立ち入ったものとして、邸宅侵入罪に該当すると判断された。
 

東京都葛飾区亀有の分譲マンションの事例(最判平成21年11月30日)

マンション管理規約により、チラシ、ビラ、パンフレット類の集合ポストへの投函は、葛飾区の公報に限って認めており、集合ポスト付近の掲示板にも管理組合名義で「チラシ・パンフレット等広告の投函は固く禁じます。」と定められていた。
しかし、被告人は、廊下や階段といった共用部分に立ち入ったうえ、各住戸のドアポストに特定の政党の政治的なビラを投函した事例。
被告人の立入り行為は、管理組合の意思に反することが明らかで、法益侵害の程度が極めて軽微とは言えないので、住居侵入罪が成立すると判断された。
 

マンションの共用部分に不法侵入しても政治的なビラの投函でなければ問題ないのか?

上記で紹介した事例はいずれも、政治的なビラが投函されたものです。
警察が動いたのも、政治的な問題や公安がらみの事案だったからという面もあります。
また、争いが最高裁まで持ち越されたのも、政治的なビラの投函が憲法21条1項により保障されている表現の自由と密接に関連する問題だからという事情もあります。
 
ただ、政治的なビラでなければ、住居侵入罪が成立しないという意味ではありません。
実際には、商業的な宣伝のチラシが投函されただけで、警察が住居侵入罪で捜査するかどうかは微妙ですが、少なくとも、宣伝している会社の評判は、却って悪くなるだけです。
そのため、チラシ・パンフレット等広告の投函を禁止する旨の張り紙等がある場合は、投函を控えるのが無難と言えます。
 

マンションの共用部分や敷地への立ち入りが違法となるケース

居住者や管理権者がマンションの共用部分や敷地への立ち入りを禁止している場合は、無断で立ち入ると不法侵入になり、住居侵入罪に問われる可能性があります。
具体的なケースを確認しておきましょう。
 

マンションの敷地が門や塀により囲まれている場合

マンションの敷地が門や塀により囲まれており、出入り口付近の案内板や掲示板に、ポスティング禁止等の掲示がある場合は、無断で立ち入って、ポスティング等を行っていると、住居侵入罪に問われる可能性があります。
 

ポスティング禁止等の掲示を無視した場合

ポスティング禁止等の掲示があるにも関わらず、掲示を無視してポスティングを行っている場合は、道路から入りやすい場所にポストがあったとしても、住居侵入罪に問われる可能性があります。
 

公序良俗に反するチラシをポスティングする場合

ポスティング禁止等の掲示が見当たらない場合でも、風俗系やピンク系のチラシをポスティングすることは、風俗営業法に違反するため、住居侵入罪に問われる可能性があります。
 

ポストを壊した場合

ポスティング禁止等の掲示が見当たらなくても、ポスティングの際にポストを壊した場合は、器物損壊罪及び住居侵入罪に問われてしまう可能性があります。
 

軽犯罪法に抵触する場合

軽犯罪法とは軽微な犯罪を犯した場合に拘留又は科料に処せられるというものです。
マンションの共用部分や敷地への不法侵入関係では次のような行為が該当します。
 

  • ・居住者がいなくなったマンション(ゴーストタウン・ゴーストマンション)に正当な理由なくひそむ行為
  • ・マンションの共用部分や敷地のうち、入ることを禁じられた場所に正当な理由なく入った場合
  • ・マンションの掲示板等に管理組合等の許可を得ずに貼り紙等をした場合

 
こうした行為を行った場合は、マンションの共用部分への立ち入り自体は不法侵入でなくても、軽犯罪法違反に問われる可能性があります。
 

マンションの共用部分や敷地への不法侵入で逮捕されるケース

マンションの共用部分や敷地へ不法侵入した場合、警察に逮捕されるのでしょうか?
この点については、逮捕されるのはこのようなケースと一概に言うことはできません。
確実に言えることは、マンションの共用部分や敷地へ立ち入っており、居住者や管理権者から立ち去るように注意されたにも関わらず、立ち去らなかったり、言い合いになったりしたケースでは、不退去罪に該当しているため、警察に通報される可能性が高くなることです。
警察が駆けつけた場合は、状況次第では、現行犯で逮捕されてしまう可能性もあります。
 

マンションの共用部分や敷地への不法侵入で逮捕された場合の流れ

マンションの共用部分や敷地への不法侵入で警察に逮捕された場合の流れは、他の刑事手続と同じです。
 
警察は、住居侵入罪の被疑者を逮捕した場合は、48時間以内に取調べを行い、検察官へ送検します。
検察官も24時間以内に取り調べを行い、起訴するか不起訴とするかの判断を行います。
捜査を続ける必要があると判断した場合は、20日間まで勾留することができます。
つまり、逮捕された場合は、最長で23日間にわたり、身体拘束を受ける可能性があります。
 
もっとも、犯罪の嫌疑が住居侵入罪だけであれば、逮捕まではされず、在宅事件にとどまることもあります。
在宅事件の場合は、捜査機関に呼び出されたときだけ、警察署等に赴いて取り調べを受けることになります。
 

マンションの共用部分や敷地への不法侵入で逮捕された場合の対処方法

マンションの共用部分や敷地への不法侵入で警察に逮捕された場合は、何もしないと、検察が起訴してしまう可能性もあります。
起訴された場合でも、法定刑は3年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金ですから、実刑とならず執行猶予が付く可能性もありますが、有罪となった場合は、住居侵入罪の前科がついてしまいます。
 
こうした事態を避けるためには、被害者側との示談を成立させることが大切です。
示談を成立させれば、検察官としても不起訴の判断を行う可能性がありますし、起訴された場合でも執行猶予付きの判決になる可能性があります。
マンションの共用部分や敷地への不法侵入の場合は管理組合、特定の個人宅を狙った場合はその個人が被害者になります。
ただ、被害者と示談を成立させるにしても、住居侵入の犯人と名指しされている加害者が直接赴くと、再び住居侵入罪を犯したと勘違いされてしまい、示談すらできないこともあります。
このような事態を防ぐためには、弁護士に依頼し、弁護士に示談を成立させてもらうのが最善です。
 

まとめ

マンションの共用部分や敷地へ無断で立ち入ることは状況次第で、不法侵入となり、住居侵入罪に該当する可能性があります。
特に、ポスティング禁止等の掲示がある場合は、これを無視して、ポスティングしていると、不法侵入とみなされて、警察に通報されてしまうことも考えられます。
マンションに立ち入る場合は、入口で掲示等をよく確認し、禁止されている行為は行わないことや、居住者や管理権者から立ち退きを求められたら、正当な理由がない限り、直ちに立ち退くことが大切です。
マンションの共用部分や敷地への不法侵入に関してトラブルを抱えている場合は早めに弁護士にご相談ください。

刑事事件の弁護人選任を検討されている方の初回相談は無料【24時間受付】弁護士が対応可能な場合はそのまま直通で無料電話相談が可能です

刑事事件はスピードが重要!今すぐ無料相談