自転車事故で骨折した場合の慰謝料・損害賠償請求の流れと方法について解説 |福岡で弁護士が刑事事件(示談交渉)をスピード解

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自転車事故で骨折した場合の慰謝料・損害賠償請求の流れと方法について解説

自転車事故で骨折した場合も、自動車による交通事故の被害を受けた場合と同様に加害者に対して、慰謝料や治療費、休業損害、逸失利益の請求などを行うことができます。
ただ、自動車事故では、示談交渉を保険会社が行ってくれるケースが多いのに対して、自転車事故の場合は、加害者が自転車保険に加入していない可能性もあり、被害の救済が受けられない可能性もあります。
このような場合は、弁護士に相談、依頼することで、適切な補償を受けられるようにすることが大切です。
 

自転車による交通事故とは?

最近では、自転車に関する交通ルールが整備されつつあります。
青切符による取締りの導入やヘルメット着用義務対象の拡大、さらに自治体によっては、自転車保険への加入も義務付けられるようになっています。
しかし、自動車やバイクの交通ルールに比べるとまだまだ甘い点があることは否めません。
自動車による交通事故の場合は、自賠責保険等、様々な制度が用意されており、交通事故に巻き込まれた場合の対処法についても、ご存じの方が多いと思います。
では、自転車による交通事故はどうでしょうか?
結論から言うと、自転車による交通事故に遭遇して、例えば、骨折してしまった場合でも、自動車による交通事故に遭遇した場合と同様の流れで、加害者に対して損害賠償請求が可能です。
ただ、自動車の交通事故に比べると十分な補償を受けられない可能性もあります。
 

自転車による交通事故で被害者が十分な補償を受けられない理由とは?

自転車による交通事故で骨折等の重傷を負っても、被害者は十分な補償を受けられないことがあります。
その理由を解説します。
 

加害者が自転車保険へ加入していない可能性がある

自動車の場合は、自賠責保険への加入が義務付けられていますし、多くの人は任意保険にも加入しています。
そのため、被害額が高額になったとしても、ほとんどの場合は、救済を受けられます。
一方、自転車の場合は、自転車保険がありますが、道路交通法で加入が義務付けられているわけではないため、加入していない人もいます。
au損保の調査では、2023年度の時点で全国の自転車保険加入率は65.6%です。
年々、加入率は上がっているとのことですが、自転車に乗っている人の3割から4割は自転車保険に加入していない可能性があります。
加害者が自転車保険へ加入していない場合、被害者が損害額の救済を受けられるかどうかは、加害者の資力次第になってしまうため、十分な救済を受けられない可能性があるわけです。
 
参考データ au損保、自転車保険加入率を調査(2024.03.14)
https://www.au-sonpo.co.jp/corporate/news/detail-343.html
 

交通事故に関する法的知識がない状態で交渉してしまう可能性がある

自動車の交通事故では、示談交渉などは、交通事故に精通した保険会社が担ってくれることがほとんどです。
そのため、適切な損害賠償額を受け取りやすい傾向がありますし、保険会社から示された示談金に不満がある場合も、交通事故に詳しい弁護士に相談することで、適切な示談金額を得やすい状況にあります。
 
一方、自転車の交通事故では、加害者が自転車保険へ加入していない場合、被害者としては被った損害については、加害者に対して直接請求するしかありません。
しかし、自転車の交通事故で、骨折等の怪我を負わされた場合に、どの程度の損害賠償をすべきなのか、適切な示談金の相場はどれくらいなのかを知らない状態で、被害者と加害者が直接やり取りしてしまうと最終的に十分な補償を受けられない可能性もあります。
 

加害者と連絡が取れなくなる可能性がある

自転車の交通事故で、例えば警察に連絡せずに、当事者だけで話を済ませてしまった場合は、加害者が、どこの誰なのか、知ることができないために、加害者に損害賠償請求ができなくなる可能性もあります。
自転車の交通事故程度で警察に連絡するのはためらってしまう方もいるかもしれませんが、自転車も道路交通法上は軽車両に位置付けられているわけですから、自転車の交通事故でケガを負わされたら、ためらうことなく警察に連絡し、加害者の名前・連絡先も押さえておくことが大切です。
 

自転車による交通事故で被害を受けた場合の警察への対応

自転車による交通事故に遭遇した場合は、警察への報告が必要です。
警察へ報告することで、交通事故証明書を発行してもらい、その後の損害賠償請求へつなげられるようになります。
 
自転車による交通事故については、「物損事故」と「人身事故」のどちらかとして処理されます。
被害者が骨折のような重い怪我を負った状況では、「人身事故」として届け出すべきです。
なお、被害者が骨折していれば当然に、人身事故になるわけではなく、警察への診断書の提出が必要になるので注意しましょう。
人身事故として届出をすると、警察は事情聴取、実況見分といった捜査を行い、その結果をまとめた「実況見分調書」を作成します。
この文書は、後に加害者に損害賠償請求する際に、交通事故の状況について争いとなった場合に、有利に使えることがあります。
 

自転車による交通事故で被害を受けた場合の告訴方法

自転車による交通事故では、警察が捜査したとしても、加害者を当然に逮捕するわけではありません。
自転車による交通事故の加害者も刑事責任を問われうる立場になりますが、意図的に被害者に自転車をぶつけたと言うのでない限り、過失傷害罪という犯罪に該当することになります。
 
過失傷害罪とは、過失により人を傷害した者について、三十万円以下の罰金又は科料に処するものです(刑法209条)。
ただし、過失傷害罪は、親告罪とされており、告訴がなければ公訴を提起することができません。
 
そのため、自転車による交通事故で被害者が骨折等の重傷を負ったとしても、警察は当然に、加害者を逮捕するわけではありませんし、送検したうえで、検察が起訴するという対応を取るわけでもありません。
被害者が加害者の処罰を望む場合は、警察又は検察への告訴が必要になります。
 

自転車による交通事故で骨折した場合の慰謝料

交通事故における慰謝料とは、交通事故が原因で被害者が精神的苦痛を味わった場合に、加害者が賠償するために支払う金銭のことです。
交通事故の示談金や損害賠償額=交通事故の慰謝料ではありません。
交通事故の示談金や損害賠償額は、被害者の入院・通院の費用や治療費、自転車の修理代金、そして、慰謝料といった、交通事故の被害者が加害者に請求できる損害賠償額のすべてを指します。
 
交通事故における慰謝料は、
 

  • ・入通院慰謝料
  • ・後遺障害慰謝料
  • ・死亡慰謝料

 
の3種類があります。
 
自転車による交通事故で骨折した場合に請求できる可能性があるのは、「入通院慰謝料」と「後遺障害慰謝料」の二つです。
 

自転車による交通事故で骨折した場合の入通院慰謝料とは

入通院慰謝料とは、交通事故の被害者が、ケガの治療のために、入院や通院を余儀なくされたことにより被った精神的苦痛に対して賠償するためのものです。
入院や通院のためにかかった費用のことではないため、注意してください。
入院や通院の期間や頻度、回数により、額は異なります。
 

自転車による交通事故で骨折した場合の後遺障害慰謝料とは

自転車による交通事故で骨折した場合でも、完治せず、後遺障害が残ってしまうことがあります。
後遺障害が残った場合は、被害者はその後の人生を障害を抱えたまま過ごさなければなりません。
その精神的苦痛に対して、加害者が賠償するのが後遺障害慰謝料です。
入通院慰謝料と比べると高額になる傾向があります。
 

入通院慰謝料の慰謝料算出基準とは

では、交通事故における入通院慰謝料は、どのように算定したらよいのでしょうか?
この点については、自動車の交通事故でほぼ基準が確立しています。
まず、入通院慰謝料の慰謝料算出基準は、自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準(裁判基準)の3種類があります。
 
自賠責保険基準は、自賠責保険によって定められている最低限の補償の基準です。
任意保険基準は、任意保険会社が独自に設定している基準で、自賠責保険よりも高めの傾向があります。
弁護士基準(裁判基準)は、弁護士が訴訟を起こした際に請求できる基準で、最も高い基準とされています。
 
自動車事故で骨折して完治するまで時間がかかった場合の入通院慰謝料の相場は次のとおりです。
 

通院期間 自賠責保険基準 弁護士基準(裁判基準)
3ヶ月 25.8万円 73万円
4ヶ月 34.4万円 90万円
5ヶ月 43万円 105万円
6ヶ月 51.6万円 116万円

 
なお、この基準は、自動車事故の場合です。
自転車が加害者の交通事故の場合は、無関係と思われるかもしれませんが、実務上は、この基準を参考に加害者に対して、入通院慰謝料を請求することもあります。
 

後遺障害慰謝料の慰謝料算出基準とは

自動車事故で骨折して後遺障害が残ってしまった場合は、後遺障害の程度に合わせて、損害保険料率算出機構から1級から14級の後遺障害認定を受けます。
後遺障害慰謝料の額も認定された等級に応じて決定されます。
そして、後遺障害慰謝料の算出基準についても、自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準(裁判基準)の3種類があります。
 
自動車事故で骨折して後遺障害が残った場合の後遺障害慰謝料の相場は次のとおりです。
 

等級 自賠責保険基準 弁護士基準(裁判基準)
第14級 32万円 110万円
第13級 57万円 180万円
第12級 94万円 290万円
第11級 136万円 420万円
第10級 190万円 550万円
第9級 249万円 690万円
第8級 331万円 830万円
第7級 419万円 1,000万円
第6級 512万円 1,180万円
第5級 618万円 1,400万円
第4級 737万円 1,670万円
第3級 861万円 1,990万円
第2級 998万円(要介護の場合 1,203万円) 2,370万円
第1級 1,150万円(要介護の場合 1,650万円) 2,800万円

 
この中で、骨折による後遺傷害は14級から7級程度で認定されるケースが多いです。
なお、この基準も、自動車事故の場合のものですが、自転車が加害者の交通事故でもこの基準を参考に加害者に後遺障害慰謝料を請求できることもあります。
 

自転車による交通事故で骨折した場合に慰謝料以外に請求できる金銭

自転車による交通事故で骨折した場合は、上記で紹介した慰謝料だけでなく、その他の損害についても請求できる可能性があります。
 

積極損害

積極損害とは、自転車による交通事故に遭遇したために被害者が直接負担することになった出費のことです。
例えば、次のような費用のことです。
 

  • ・入院費
  • ・通院費
  • ・病院までの交通費
  • ・自転車の修理代
  • ・自転車の買い替えにかかった代金

 
こうした費用は、自転車による交通事故に遭遇しなければ、出費していないわけですから、加害者に対して請求できる可能性があります。
 

休業損害

積極損害とは、自転車による交通事故に遭遇したために仕事等を休まざるを得なくなった場合に、休んだことで得られなくなった収入等のことです。
積極損害に対して消極損害と言われることがあります。
自転車による交通事故に遭遇していなければ、得られたはずの金銭ですから、加害者に対して請求できる可能性があります。
 

逸失利益の請求

逸失利益とは、将来得られたはずの収入等のことです。
自転車による交通事故に遭遇し、後遺障害が残ってしまい、労働能力が低下したために本来得られたはずの収入が得られなくなってしまった場合は、逸失利益として、加害者に対して請求できる可能性があります。
休業損害と同様に消極損害として請求する形になります。
 

自転車による交通事故で骨折した場合の加害者への損害賠償請求方法

自転車による交通事故で骨折した場合において、加害者が自転車保険等に加入していない時は、被害者自身が慰謝料、積極的損害、休業損害等の消極的損害を算定したうえで、直接、加害者に請求する必要があります。
そのための労力は、自動車の交通事故で被害を受けた場合と比較しても大して違いはありません。
入院や通院をしたり、自転車での交通事故の傷を負った状況のまま、加害者に対してこうした請求を行うことは、精神的にもきついでしょう。
こうした場面では、弁護士に相談、依頼することが被害の救済を受けるためにも大切と言えます。
 

まとめ

自転車事故で骨折等の重傷を負わされた場合でも、自動車事故のケースと同様に、加害者に対して、慰謝料や入院費・通院費などの積極損害や休業損害、逸失利益といった消極損害を請求することができます。
しかし、加害者が自転車保険に加入していない場合は、十分な補償を受けられない可能性もあります。
このような場合は、弁護士に相談・依頼することで、適切な損害賠償額を算定して、相手方に請求してもらうことが大切です。

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