執行猶予にしてほしい
刑事事件で逮捕・起訴された場合、刑務所への収監は避けたいところです。
罰金刑などの軽い判決を望めないのであれば、執行猶予付きの判決を獲得する必要があります。
執行猶予にしてほしいのであれば、刑事弁護が不可欠です。
この記事では、執行猶予が付く条件や、具体的な弁護活動を解説します。
そもそも執行猶予とは
執行猶予とは、言い渡された刑の執行が一定期間先送りされる判決です。
刑務所に収監されないため、自宅に戻って日常生活を送れます。
執行猶予期間を過ぎると、言い渡された刑の効力は完全に消えます。
例として、「懲役2年・執行猶予3年」の判決を受けたとします。
判決から3年間、新たに罪を重ねずに過ごせた場合、刑務所に行く必要がなくなるわけです。
執行猶予が取り消される条件
執行猶予は、執行猶予期間中に新たに罪を犯し、禁錮以上の罪になると必ず取り消されます。
また、以下の項目のいずれかに当てはまると、裁判官の判断によって取り消される場合があります。
- 執行猶予期間中に罰金刑に課せられた
- 保護観察のルールを破った
- 執行猶予判決の前に、他の罪により禁固以上の刑で執行猶予になったと発覚した
執行猶予が取り消されるとただちに懲役刑や禁錮刑が執行され、刑務所に収監されます。
執行猶予を付けられる条件
執行猶予を付けられる条件は、「初度の執行猶予」と「再度の執行猶予」によって異なります。
それぞれの条件を説明します。
1.初度の執行猶予
ほとんどの人は、「初度の執行猶予」による判決を目指します。
初度の執行猶予の条件は、以下2つです。
- 3年以下の懲役または禁錮、50万円以下の罰金刑である
- 以下2つのどちらかを満たす者
- ①禁錮以上の前科がない
- ②禁錮以上の前科があるが、刑期終了または執行免除から5年以内に禁錮以上の刑を言い渡されていない
これら2つの条件を満たす人は、執行猶予付き判決を受けられる可能性があります。
2.再度の執行猶予
再度の執行猶予は、執行猶予期間中に新たに罪を犯した人が目指す判決です。
初度の執行猶予より条件が厳しく、次のすべての要件を満たす必要があります。
- 前回の執行猶予で保護観察処分になっていない
- 新たに言い渡された今回の刑が、1年以下の懲役または禁錮である
- 特に酌むべき情状の余地がある
再度の執行猶予を目指す人は、執行猶予を受けたにもかかわらず、さらに犯罪を重ねています。
ゆえに、「特に酌むべき情状の余地がある」と認めてもらうのは難しいでしょう。
自主的な更生は困難と判断されやすく、再度の執行猶予が適用されるケースは少ないです。
執行猶予を目指すための弁護活動
執行猶予付き判決を得るには上記の要件を満たすほか、被告人に有利な情状も必要です。
弁護士に依頼すれば、裁判に有利な主張や証拠の提示が可能になります。
ここでは、執行猶予を目指すための弁護活動を3つ紹介します。
1.被害者との示談または贖罪寄付
被害者がいる犯罪であれば、被害者との示談成立が欠かせません。
刑罰を決定する際は、「被害弁償による被害回復」や「被害者が被告人を許す意思」も考慮されるためです。
弁護士が被告人の代わりに交渉を進め、公判までの示談成立を目指します。
なお、被害者がいない犯罪や、被害者と示談が成立しないケースもあるかもしれません。
その場合は「贖罪寄付」という方法もあり得ます。
贖罪寄付とは、慈善団体などに寄付し、強い反省の意思を示す行為です。
または、被害者への損害賠償金を法務局へ預ける「供託」を行う場合もあります。
2.更生に向けた支援対策の提示
執行猶予を目指す裁判では、被告人に再犯の恐れがない点の強調も重要です。
たとえば、以下のような要素を主張します。
- 前科がない
- 軽微な事案である
- 更生を支える支援体制
- 具体的な再犯防止策
- 家族による監督の誓約書、情状証人としての出廷
- 仕事や就職先があり、更生しやすい環境が整っている
被告人は更生の可能性が高いと判断してもらうため、こうした主張を並べます。
3.反省の意思表示
本人の反省の意思も、執行猶予を得る上で大切です。
反省文の提出に加え、本人が証言台に立って自分で反省の意思を伝える必要があります。
単に「反省しています」と言うだけでなく、以下のようなポイントを踏まえて自分の言葉で真摯に話すことが大事です。
- なぜ犯行に至ったのか
- 本来ならどう行動するべきだったのか
- 被害者に対してどのような謝罪の気持ちがあるのか
- 今後はどのように更生していくのか
弁護士に依頼すれば、反省文や証言台での発言内容をアドバイスしてもらえます。
反省の意思を的確に言語化してもらうことで、裁判官にも深い反省の念が伝わるでしょう。
まとめ
執行猶予になると刑務所に収監されず、これまで通りの生活を過ごせます。
刑務所に収監されたくないのであれば、弁護活動により執行猶予を目指しましょう。
刑事弁護が得意な弁護士に相談することで、執行猶予付き判決を獲得できる可能性が高まります。