前科を付けたくない
「逮捕されたけど前科を付けたくない」
「逮捕されそうで不安。前科が付くとどうなるの?」
このように前科が付きそうで不安な場合、弁護士へのすばやい相談が必要です。
この記事では、前科による影響や、前科を付けないための弁護活動を解説します。
そもそも前科とは?前歴との違い
前科とは、有罪判決を受けた経歴を意味します。
罰金、執行猶予、懲役、禁錮、科料などの有罪判決を言い渡された際、前科が付きます。
どれほど軽微な刑罰でも必ず前科が付き、付けないためには不起訴処分または無罪判決を獲得するしかありません。
なお、前科と似ている言葉に「前歴」があります。
前歴とは、事件の被疑者として捜査された経歴です。
捜査の結果逮捕されなかった人や不起訴になった人も、前歴がつきます。
とはいえ、前科とは異なり、前歴による日常生活への悪影響はありません。
前科が付くとどうなる?
勘違いされる方が多いのですが、前科は戸籍や住民票に記録されません。
検察庁や本籍地のデータベースには記録されますが、無関係な第三者の閲覧は不可能です。
そのため、前科が直接的に知られて「一生就職できない」「クレジットカードを作れない」といった不利益は起きません。
では、前科が付くと、具体的にどのような影響があるのでしょうか。
「仕事・就職」と「日常生活」への影響に分け、それぞれ紹介します。
1.仕事・就職への影響
前科により、現在の仕事を解雇される可能性があります。
職場の就業規則で「刑事裁判で有罪判決になったとき」と定められている場合、懲戒解雇の対象となり得るためです。
また、報道によってネット上に実名が残り、就職に不利に働く場合があります。
さらに、就職時の履歴書の賞罰欄に前科を記載しないと、虚偽記載により将来的に解雇されるかもしれません。
加えて、前科による制限を設けている国家資格もあります。
たとえば、教員や行政書士、医師などの職業は、前科による資格停止や取得制限が定められています。
2.日常生活への影響
前科は、日常生活へも不利益をもたらします。
例として、前科を持つ人は、海外渡航の制限を受ける場合があります。
前科の内容や渡航先により、新たにパスポートを発行できなかったり、入国審査に落ちたりする恐れがあります。
これから結婚を考えている場合、婚約者や相手の家族に前科が知られて婚約破棄に至るケースもあるでしょう。
また、自分の家族の生活への影響も考えなくてはいけません。
周囲の人に事件が露見し、家族が引越しや退職をせざるを得なくなる可能性があります。
「不起訴処分」になれば前科は付かない
前科を回避するためには、不起訴処分の獲得が必要です。
不起訴処分になれば刑事裁判も開かれず、身柄拘束されていてもただちに釈放されます。
なお、前科を避けるもう一つの方法に、刑事裁判での無罪判決があります。
しかし、刑事裁判における有罪率は約99%と言われており、非常に高い確率です。
実際、「令和4年版犯罪白書」によると、2021年度の裁判確定人員における有罪率は99.56%に達しています(※1)。
したがって、逮捕された罪を本当に犯しているのであれば、罪を認めて不起訴を目指す方法が堅実です。
無実の罪で逮捕された場合であっても、「嫌疑なし・嫌疑不十分」による不起訴を狙います。
実際に罪を犯しているかにかかわらず、最終的に不起訴を目指す方針は変わりません。
※1 出典:法務省「令和4年版犯罪白書」
前科を付けないための弁護活動
どのような罪で逮捕されても、前科を付けないためには起訴の回避が重要です。
詳しい弁護活動を2つに分けて説明します。
1.すばやい示談成立が重要
示談交渉が成立していると、不起訴を獲得しやすくなります。
検察官は起訴の有無を決定する際に、示談成立の有無を重要視します。
示談が成立していれば被害者の処罰感情が低く、被害も回復されていると見なされるからです。
示談交渉を弁護士に任せることで、スムーズな成立が見込めます。
被害者感情をみやみに刺激しないよう慎重に話し合うため、示談が決裂するリスクも低いです。
2.検察官への働きかけ
被害者への示談交渉に加え、検察官への不起訴交渉も行います。
以下のような被疑者の事情を検察官に提示し、起訴の必要性がない点を主張します。
- 示談が成立している
- 被疑者の年齢
- 前科がない
- 軽微な事案である
- 再犯の可能性が低い
- 深く反省している
弁護士はこうした事情を的確に主張し、被疑者が不起訴になるよう努めます。
まとめ
前科が付くと、現在の仕事や将来的な就職への影響が危ぶまれます。
海外渡航の制限など、日常生活への影響も生じます。
前科を付けたくないのであれば、不起訴獲得を目指す弁護活動が大切です。
早期に弁護士へ相談してすばやく示談を成立させることで、不起訴処分に持ち込みやすくなります。